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2019.09.24

イノベーションを生み出す真の働き方改革とは?

明治大学大学院グローバルビジネス研究科
野田稔教授インタビュー

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「働き方改革」という言葉が一般的になる一方で、多くの企業では依然として「働き方改革=早く退社すること」といった認識で捉えているところも少なくありません。成果を上げる真の働き方改革とはどのようなものなのでしょうか。人材育成や組織論、経営戦略論を専門とする、明治大学大学院グローバルビジネス研究科の野田稔教授に聞きました。

業務の「無駄」を省くために腹をくくって取り組むべき

――4月に働き方改革関連法が施行されてから「働き方改革」という言葉を聞かない日はありません。日本企業の取り組みをどのように見ていらっしゃいますか。

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野田稔(以下、野田) ずいぶん進んできたという実感はあります。ただ、多くの企業では、社員の方が生き生きと取り組んでいるというよりは、会社から押しつけられて、嫌々やっているという印象を受けます。もともと日本のビジネスパーソンの働き方は大変閉塞感が強く、国際的な調査でも仕事に対する満足度が低いのです。なぜ、これほど仕事が嫌いなのか。その背景には、過剰な労働を強いられているという気持ちがあるのではないでしょうか。つまり「早く帰りたいのに帰れない」と多くの人が不満を感じているのです。

ところが、働き方改革で「早く帰っていい」と言われても、素直にうれしいとは思えない。社員の不満が減らないのは、「残業するな」と言われても、やるべき仕事が減らないのだから、どこかで帳尻合わせをしないといけないことが分かっているからです。そのために、持ち帰り残業をすることもあり、ある会社では「ノー残業デー」の退社時間以降になると、会社周辺のカフェが社員だらけになるという笑えない話もあります。

――多くの企業では長時間労働の是正を目指して、数値目標を掲げているところもあります。数字の上では、成果も出ているようですが。

野田 帰れるのに帰らないという「ダラダラ残業」は減っていると思います。ただし、仕事のやり方そのものを変えないと、これ以上の削減は難しいでしょう。たとえば「無駄の排除」です。「無駄の排除」というと、個人のレベルで「無駄を省け」と言われるのですが、実際は個人レベルではなかなか省けるところがありません。組織全体で構造的な無駄を省くしかないのです。

例えば、交通費の精算伝票を7~8人でチェックしているような企業がありますが、これは明らかに無駄です。ただし、さまざま業務の中で、何が無駄かを確認するためには、一度すべての業務を止めて見直す必要があります。「毎日忙しくて、そのための時間がなくて」と言いながらずるずると無駄な業務を続けている企業が少なくありません。私がお付き合いしている大手システム開発会社では、業務の優先順位付けを徹底して行いました。業務の中には日報のように毎日発生するものから、中期経営計画作成のように3年に一度程度しか発生しないものもあります。そこで、これらをすべて可視化したところ、いかに無駄な業務が多いか把握することができたのです。それらを優先順位付けし、優先度の低い仕事は「やらない」ということに決めたのです。これは個人では判断できないことです。やはり組織全体で腹をくくらなければなりません。

何のために「働き方改革」をするのか見直すことも必要

――野田先生は、「働き方改革」における長時間労働の是正にこだわると、人材育成に弊害が出るとも指摘されていますね。

野田 例えば「午後10時を過ぎたら働いてはならない」という風潮がありますが、これは思い違いだと思います。例えばシステム開発会社であれば、カットオーバーの直前に徹夜しなければ乗り切れない、というようなことも実際のビジネスではあり得ると思われます。これは、学園祭の前の準備のようなもので、「ここ一番」という修羅場を乗り切ることで、社員もやりがいを感じるでしょうし、成長する機会にもなるでしょう。そんなときは、シフトを組んで、夜食も用意して、音楽を鳴らしながら「やるぞ!」とやればいいじゃないですか。そして、無事に納品できたら、思い切って休みを取って海外旅行に行けばいいのです。

大切なのは「脱・恒常的長時間労働」であって、ダラダラと働いているのが望ましくないのです。誤解を恐れずに言えば、多くの企業では本気で「働き方改革」に取り組んでいないのです。本気でやれば本質をつかむことができますので、そのような知恵や工夫も出てくるはずです。

――改めて、何のために「働き方改革」をするのかということが問われそうですね。

野田 もともと「働き方改革」は生産性の向上を主眼にしていたわけです。長時間労働の是正ではありません。生産性はインプットに対するアウトプットの割合で示すことができます。インプットを削減しつつアウトプットを増やせば生産性が向上します。ところがインプット削減だけでは限界があります。となれば、アウトプットの増大が必要ですが、アウトプットは比例的に増えるわけではなく、階段のように非連続で上がっていくものです。それを引き上げるものこそがイノベーションです。つまりアウトプットとは、これまでとはまったく異なる価値を生み出すことによって上がっていくのです。そのような点で、日本企業は「働き方改革」のフェーズⅡに進まなければなりません。私はもう「働き方改革」という呼び方をやめて、「成果の出し方改革」と呼び変えています。すなわち、成果をどう出していくのかという、その方法論を抜本的に変えていかなければなりません。新しい価値を生む働き方とは何なのか。もっと極端なことを言えば、どうすればビジネスイノベーションが興せるのか、という点にすべての力を注いで改革を進めるべきです。

社会の課題を解決したいという思いからイノベーションが生まれる

――「働き方改革」を進めると、十分な時間を投入できないために、イノベーションが興せないという声もあります。

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野田 それはまったくの誤解です。働き方改革の次のフェーズがイノベーション志向なのです。ではイノベーションはどうやって起こせるのか。イノベーションには先端的な科学技術が必要だと言う人もいます、またイノベーションを興すことが目的だと語る人がいますが、いずれも誤りです。イノベーションは単なる手段にすぎません。イノベーションの目的は、多くの場合、社会課題の解決です。

経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターは、「イノベーションは一見すると関係ないものを結びつける『新結合』である」と定義しています。私がよく例としてお話ししているものに「ラクダ冷蔵庫」があります。国連機関のユニセフはアフリカの村々の伝染病撲滅運動のために四輪駆動のオフロードカーで荒野を走り回っていました。ところが、車の燃料代やメンテナンス費用がかさんで活動ができなくなりました。伝染病は撲滅するまで続けなければ元に戻ってしまいます。そこで、悩んだ担当者はラクダにソーラーパネルと冷蔵庫を乗せ、さらにラクダを引いている男性に注射の打ち方を教えて村々を回ってもらったのです。結果として、コストが大幅に削減されただけでなく、伝染病撲滅活動も進みました。先端的な技術はまったく使っていません。まさに「新結合」です。

――土俵際に追い詰められたことから知恵を絞り出したわけですね。日本の企業でもこのようなイノベーションを興すことができるでしょうか。

野田 社員の一人一人が会社や上司を見るのではなく、社会に目を向けていることが大切だと思います。顧客は何に困っているのか、さらに顧客の顧客が何を欲しがっているのか。これを「顧客インサイト」と呼びますが、観察と対話を通じて、顧客や社会が困っていることはないだろうかということを常に考え、なんとかしたいという思いからイノベーションが始まるのです。

海外で新しい価値を生み出し存在感を発揮してほしい

――社員の意識を変えることが大切なのですね。野田先生は以前から「ダイバーシティ」や「健康経営」を重視されています。その理由はどこにありますか。

野田 「ダイバーシティ」というとCSRの一環、「健康経営」というと福利厚生の一環と捉えている企業がまだまだありますが、私はそれはまったく違うのではないかと考えています。というのは、先ほどの「新結合」ではないですが、イノベーションは多様な人材が集まらないと生まれないからです。その点で、ダイバーシティはイノベーションに不可欠だといえます。同様に、社員が元気に生き生きとしていなければ、顧客の悩みにまで考えが及びません。経営者の中には、ダイバーシティも健康経営も「やらなければならないからやる」と語る人がいます。しかし、そのように捉えるのではなく、社内からどんどんイノベーションを生み出し、会社を強くするために経営者が率先してダイバーシティや健康経営に取り組んでほしいと考えています。

――グローバル化の進展に伴い、日本企業の競争力向上が求められています。

野田 グローバル化とは、「日本のマーケットが縮小しているから海外の人口の多いエリアに出て行くこと」ではありません。真のグローバル化とは、先ほどお話ししたように、現地の人や企業、社会が困っていることを解決するために自社で何ができるのか、ということを社員一人一人が知恵を絞り出し、形にしていくことです。海外でのビジネス拡大はその結果にすぎません。私は日本企業や人材にはまだまだ底力があると信じています。ぜひ海外で新しい価値を生み出し、存在感を発揮してほしいと願っています。

【本記事は JBpress が制作しました】

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