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2019.12.06

アフラックに聞く!テレワーク成功の決め手

独自の働き方改革「アフラックWork SMART」とは

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政府による働き方改革関連法の施行もあり、テレワークを本格的に導入し始めた大企業は珍しくない。だが、アフラック生命保険は働き方改革という言葉が今ほど浸透していなかった2015年から改革をスタートさせた。「アフラックWork SMART」と名付けられた働き方改革実現のために実施したテレワーク推進が成果を上げたことで、2016年には「テレワーク先駆者百選」に選出され、2018年には「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞)」で「特別奨励賞」、2019年には「テレワーク先駆者百選」で「総務大臣賞」を受賞した。

制度、組織、技術などのあらゆる面でテレワーク成功の先例が少なかった時期に、あえて全社レベルの改革に乗り出し、成功できた秘訣はどこにあるのか。膨大かつ秘匿性の高い個人情報を有する保険会社でありながら、セキュアなテレワーク環境を達成した点も含め、今や多くの大企業がアフラックの事例から学ぼうとしている。そこで今回は同社でテレワークなどを含む働き方改革に取り組むダイバーシティ推進部の亀岡宏氏と髙代公美氏に話を聞いた。

初期段階のトラブルは覚悟の上 「まずはやってみよう」の精神でスタート

アフラック生命保険では、社員一人ひとりの「仕事の進め方・働き方の見直し」を経営課題として挙げていた。そのような中で、アフラック流・働き方改革といえる「アフラックWork SMART」という基本方針を掲げた。

亀岡 宏氏(以下、亀岡氏):単なる時間外労働の削減ではなく、仕事の付加価値を高めることとライフの充実により個々人がワークライフマネジメントを実践していくことが重要だということを、経営層が明確にしたことが大きかったと思います。

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アフラック生命保険株式会社 ダイバーシティ推進部 課長代理 亀岡 宏 氏

髙代 公美氏(以下、髙代氏):あらゆる立場、あらゆる職務にいる者が今よりも生産性を上げ、なおかつ個々のライフを充実させていく働き方をするには何が必要なのかを改めて議論し、2015年に発表したのが「アフラックWork SMART」だったのです。

経営戦略として「アフラックWork SMART」というスローガンのもとに働き方改革の実現が進められることになった。「SMART」とはアフラックが最重要ポイントとして選択した5つの働き方の原則で、See the big picture(視野を広く持つ)、Maintain focus(目的を考える)、Act with initiative(自分から動く)、Respect dialogue(対話を重ねる)、Think time-value(時間を意識する)の頭文字による造語だ。

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亀岡氏:当社が考える働き方改革を実現するには、この5つの働き方の原則を実践するとともに、時間や場所による制約にとらわれずに働けるようにすることが不可欠だ、ということで、テレワークの導入を検討することになりました。

テレワーク実現へのチャレンジがこうして始まったことになる。しかし「経営層がまず課題を提示し、その実現のためメンバー間で意識改革が叫ばれる」ところまでは、多くの企業が実践している。問題は総論ではなく実践における各論だ。特に大規模な組織では、社員の意識改革をサポートするための体制づくりや、技術面も含めた環境整備のための具体策を実行する局面で頓挫するケースが多い。

髙代氏:そこは社風が追い風になってくれました。確かに当社は正社員だけでも5000名を超えますし、営業拠点は国内に90カ所、販売代理店の数も1万店を超える大所帯ですから、働き方を変革するために新たな制度を導入したり、システムやデバイスの改善や増設を進めたりしようとすれば、多くの制約条件をクリアしていく必要がありました。でも「一度やると決めたなら、まずはやってみて、そこから改善点を拾い上げていこう」という社風が行き渡っていることもあり、動きは速かったです。

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アフラック生命保険株式会社 ダイバーシティ推進部 課長代理 髙代 公美 氏

「まずはやってみよう」の精神は、例えば「在宅勤務を社員各自が年に1度は経験する」というように具体的な目標とルールを設定していくことで実行されていったという。注目すべきは、こうした各局面で「まずは経営層から実行」という精神が発揮されていたことである。

亀岡氏:ここでも社風が追い風となりました。経営戦略として取り組むことになったダイバーシティの推進ですから、現場の社員に「まずやってみよう」と働きかける立場である管理職が先に体験をするべき。何がどう面倒で、どんな感覚を覚えるのかを自分自身が経験したうえで部下に働きかけるのが当然だという価値観を全社で共有していたので、管理職クラスがテレワークを体験した後、各部署の社員も実行していきました。もちろん、初めての在宅勤務経験では課題点が続出しました。

髙代氏:例えば個人情報などを含むデータをやりとりするため、VPN(Virtual Private Network、仮想専用線)接続をした上で会社のネットワークにアクセスすることをマストにしていますが、その接続がうまくいかないというケースもありました。またSkypeを用いた電話会議をしようとしたけれども、初めて手にしたSkypeの操作がよく分からなかったという社員もいました。

ただし、ダイバーシティ推進部の両氏はこうした初期段階の問題を微笑みながら「最初からうまくいくはずがありません。対応は大変でしたが、覚悟していました」と振り返る。

技術環境の拡充、制度改革、意識変革の同時進行により、数字に表れた多大な成果

2017年ごろに本格化した「社員各自がテレワークを体験する」という施策は、徐々にその頻度と対象範囲を拡大していった。「アフラックWork SMART」は、性別や年齢に関係なく幅広い社員たちから支持の声が上がり始めたという。

髙代氏:テレワークというと一般的に子育て中や介護中の社員の利用をイメージしますが、当社では属性に関係なく多くの社員が積極的にテレワークに取り組んでくれています。アフラックの取り組みがさまざまな賞をいただけたのは、属性にこだわらずに全社員を対象にしながら進めていった点が、特に評価されたのではないかと思っています。

こうなれば当然、推進側の両氏がやるべきことも増えていく。

亀岡氏:在宅勤務の局面で基本となるのはセキュリティ対策を万全に施した端末です。テレワークに積極的に取り組む社員や部署が増えていく過程で、端末の増設が急務になっていきました。現在では社員5人に1台という割合で端末が行き渡っている状況ですが、今後さらに増やしていく計画もあります。またサテライトオフィスについても現在では全国の主要拠点に9カ所設置しています。ここでも技術部門との連動で万全なインフラを整えています。

制度面でも急速に改革が進んだ。「所定外労働時間の削減」、「有給休暇取得率の向上」、「配偶者出産休暇の取得推進」「男性育休の取得推進」「年1回以上のテレワーク実施」という5つのKPIのもと、フレックス制度やシフト勤務等の制度に改善を加えたという。その結果は推進側の2人の期待をさらに超えるものだった。

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髙代氏:例えば所定外労働時間の平均値は2015年以降、ずっと前年比10%以上のペースで減り続け、2018年においても対前年比12.2%の削減を達成しました。年次有給休暇の取得率も2016年までは60〜70%ほどでしたが、2018年には平均取得率83%にまで上がっています。そして配偶者出産休暇取得率とテレワーク実施率についても目標を達成しています。

「まず経営層から取り組む」という精神も具体策に結び付いている。管理職向けのタイムマネジメント研修や、eラーニングやイクボスセミナーを実施。ワークライフバランスの充実と生産性の向上を、チームで実現していくための発想やノウハウを学び続けている。

亀岡氏:最初から全ての社員や管理職がテレワーク、あるいは働き方に関する制度改革などについて前向きだったわけではありません。「会社の方針には共感するけれども、私の仕事はテレワークでは不可能なのでは」と言う社員もいました。

髙代氏:「在宅勤務の部下が本当にちゃんと仕事をしてくれているのか不安になる」と漏らす管理職もいましたね。そういった意見も、よくわかります(笑)。そのためにも、研修などを設定していきましたし、われわれとしても周知活動の一環として社内メディアによるテレワーク事例の情報発信を続けてもいます。

テレワークが生み出したポジティブな変化の数々

実は亀岡氏自身も、かつてモバイルワークの有効性を実感した経験があるのだという。

亀岡氏:例えば、札幌の拠点で営業をする場合、他エリアと同様にビジネスパートナーである代理店と定期的に会議をするのがルーティンとなっています。ただ、遠方にある代理店に行く場合、札幌から片道で2時間もかかるケースもあり、そこに週3回通うだけで移動に時間がかかってしまいます。ですが、3回のうち1回だけでもWeb会議にすることで、移動に充てていた時間を別業務の対応に充てることが可能になります。実際にWeb会議システムを代理店にも導入してみたところ、問題なく意見のやりとりや情報共有が可能になるだけでなく、普段なかなか顔を出すことができなかった他代理店とのコミュニケーションに時間を充てられているようです。アフラックのテレワークについての取り組みが成果を上げているのは、このように「やってみたら、期待していた以上に効果があった」からだと確信しています。

髙代氏:一方で「営業部門はモバイルワークがしやすく、効果も上がりそうだけど、私たち契約事務部門ではテレワークが難しいのでは」という懸念もありましたよね。

亀岡氏:そうですね。保険という事業ではお客様の大切な個人情報をお預かりしています。ですから、お客様の給付請求や保全手続きを行う契約事務部門などではセキュリティに対する問題意識は大きいですし、テレワーク絡みでシステムやデバイスを改革していく時にも、この点には最大限の神経を配りました。

髙代氏:でも、ある部門ではテレワークがきっかけになってペーパーレスへの取り組みが加速しました。今まで「紙じゃなければ無理」だと思い込んでいたものの、ペーパーレスにトライしてみたらむしろ作業スピードや効率の面だけでなくセキュリティ面でも有効だということが分かりました。

こうして、「やってみよう」の精神によるトライと、実行を通じた発見から複数の部門がその有効性に気づき、オーナーシップを持って自走し始めてもいるとのこと。両氏は口をそろえて語る。「こうしてダイバーシティ推進部主導だった活動が、各部門の主体的改革へと移行している現状が最良の成果」なのだと。数字だけでは見えてこないテレワークの波及効果は他にもあるようだ。

亀岡氏:最近になって試験的に導入を始めたのがOriHimeという分身ロボットです。アフラックでは全国の拠点から社員が集まって研修会を開く機会があり、そこでも育児などを理由に参加できない社員に対しWeb会議システムなどを活用していたのですが、会場に来られなかった参加者の存在感はどうしても希薄になりがちで、実際に会場で参加している人とは温度差がありました。「じゃあ、電話やPCではなくロボットを置いて、その人の代わりに参加させてみてはどうか」というアイデアが出てきました。

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髙代氏:笑い話で済ませてしまう企業もあるのかもしれませんが、ここでも「やってみよう」という社風が後押しし、現在、育児中などを理由により研修会場までの異動が困難なケースなどにおいて試験的に導入を始めました。

単にその場に「分身」がいる、ということだけではない。ロボットがうなずいたり、挙手などの動作をしたりして、遠隔地にいる当人の声を発するため、議論の場に参加しているという存在感や搭載しているカメラによって得られる映像情報量の多さなども好評だという。さらにテレワークの浸透は本社と拠点との間にあった垣根をも乗り越えた新たな可能性も示しているとのこと。

亀岡氏:今、特に注目しているのは、社員のキャリア形成や人材採用での可能性の広がりです。例えば地方拠点ならではの仕事にやりがいを感じている社員であっても、東京に転勤することなく本社業務を担えるテレワーク環境が整えば、自身が望む将来設計やキャリアパスに選択肢を増やすことが可能になります。これから新卒で入社しようという全国の学生が、地元にいながらでも本社や各地の仕事に携わることができれば、当人のライフプランも自由に広がりますし、採用する側としてもより多くの方にチャンスを提供していくことが可能と考えています。

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今後、多くの大企業がアフラック並みのテレワークを浸透させることができたなら、日本における働き方やキャリア形成のあり方までもが大きく変わるかもしれない。「場所と時間の制約から自由になる働き方=テレワーク」には、社会や概念の常識を覆すような可能性も秘められているのである。では、それほどまでのポジティブな可能性を引き出すにはどうすれば良いのか? 高代氏は最後にこう語った。

髙代氏:それぞれの企業にさまざまな制約や事情があると思いますが、やっぱり重要なのは「やってみる」ことの意義をトップも現場も持ち合わせることではないでしょうか。「あれこれ不安な点を議論している時間があったらやってみて、失敗したらそこから改善点を見つけて再チャレンジする」というアプローチで取り組んでいます。今後も私たちは「やらない理由」を探す前に「やってみる」スタイルで、ダイバーシティやアフラックWork SMARTを進めていきたいと思います。

【本記事は JBpress が制作しました】

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