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2019.12.16

Web会議が40倍に! SCSKの全社的テレワーク導入法

いつでも、どこでも働ける新しい働き方「どこでもWORK」とは

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SCSKは2011年10月、住商情報システム(SCS)とCSKが経営統合して誕生した。製造・流通・金融・通信業をはじめ、幅広い業界に向けてITサービスを提供している。単体での社員数は約7300人、そのうち約5800人がIT人材(技術職、営業職)だ。同社では、これらの社員が「いつでも、どこでも働ける新しい働き方」の実践・定着を目指し、「どこでもWORK」を推進している。

そこで今回は同社で「どこでもWORK」の推進を中心とした働き方改革に取り組む人事グループ人事厚生部の山口 功氏、南 政克氏、村田 宜則氏に話を聞いた。

早期から残業時間の削減などに取り組み、実績を重ねる

SCSKの働き方改革への取り組みは早い。まだ「働き方改革」という言葉が一般化する前から残業時間の削減などに取り組んできた。

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人事グループ 人事厚生部 労務課  課長 南 政克 氏

同社人事グループ 人事厚生部 労務課長の南政克氏は次のように紹介する。「2013年には『スマートワーク・チャレンジ20』という取り組みを進めてきました。『20』という数字に示されているように、月間平均残業時間20時間未満、年次有給休暇取得日数20日(100%取得に該当)を目指したものです」

その実績にも注目したい。有給休暇取得日数は15.3日(取得率78.4%)から18.5日(取得率94.4%)に上昇と、目標にわずかに届かなかったがほぼ達成のレベル、残業時間は26.1時間から17.7時間へと大幅に削減された。

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「この成果をもとに、2015年には『健康わくわくマイレージ』という取り組みを行いました。日常的な健康行動と健康診断結果を評価することで、健康維持・増進を支援するものです」(南氏)。

この取り組みでも、2014年度から2018年度にかけて、ウオーキング実施率が34%から74%に上昇、喫煙率は36%から16%に減少するなど、着実に成果を出している。

「これらを受け、当社の働き方改革の第3の施策として2016年にスタートしたのが『どこでもWORK』です。その名のとおり、『いつでも、どこでも働ける』新しい働き方へのチャレンジです。推進の背景には、当社や当社の社員を取り巻く環境の変化があります。社会的な観点では、少子高齢化による労働力人口が減少し、要介護者も増加しています。社員の観点では、ワーク・ライフ・バランスの確保がさらに重要になっています。また、企業の観点では、人材の確保、BCP(事業継続計画)への対応、生産性の向上などが求められています」と南氏は説明する。

とはいうものの、IT企業の場合、上司や部下、同僚が目の前にいて膝を突き合わせながらプロジェクトを推進していくというやり方になじみがある。

それに対して、人事グループ人事厚生部長の山口功氏は、「これらの前提を覆すには、単に旗印として掲げるだけでなく、具体的な施策と、管理職などの上司、さらには経営トップも含め、意識を変えるための取り組みも必要でした」と振り返る。

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人事グループ 人事厚生部  部長 山口 功 氏

かけ声だけでなく、定着のための具体的な施策も実施したという。「『リモートワーク定着手当』を支給するとともに、上司の率先垂範を促す『組織チャレンジ』の仕組みも取り入れました」(山口氏)。

「定着手当」は実施回数に応じた手当を支給したという。さらに、「組織チャレンジ」は、管理職の実施回数に応じて倍額が支給された。逆に言えば、上司が実践しないと部下の手当が減ることから、文字どおり自らが率先して動いた管理職が多く、そのことにより全社への普及が加速したという。

「場所にとらわれない柔軟な働き方」を目指し、3つの施策を三位一体で推進

南氏は次のように話す。「『どこでもWORK』では、『場所にとらわれない柔軟な働き方』を目指し、3つの施策を三位一体で推進しました。『リモートワーク』、『ペーパーダイエット』、『フレキシブルオフィス』です」

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「リモートワーク」は、「自席」を前提としない働き方だ。ICTを活用することでリモート環境でも自席と同様に働くことができ、月に2、3回程度の在宅・サテライト勤務を目指す。

「ペーパーダイエット」は「紙」を前提としない働き方だ。印刷量、保管量を共に50%削減し、ペーパーレス会議の推進と定着化を図る。

「フレキシブルオフィス」は、「生産的・効率的」なオフィスで、多様な働き方スペース、フレックスアドレス、個人ロッカーなどを導入する。

3つの施策の中でも注目すべきは「ペーパーダイエット」だろう。紙の削減がなぜ働き方改革につながるのか。

その問いに山口氏は次のように答える。「情報を紙で共有すると、紙のある場所に集まらなければならなくなります。それではリモートワークができません。そこで当社ではまず取締役会でペーパーレス化を進めました。さらに、全ての会議室にプロジェクターを設置し、社員のノートパソコンへの移行も進めました」

同社ではさらに「紙でもらわない、渡さない/もらっても捨てる/捨てても怒らない」という「ペーパーダイエット3原則」を定め、書類についても電子化して外部倉庫へ移した。また、そのために、全社で「一斉廃棄キャンペーン」まで実施したというから念が入っている。

「ペーパーダイエット」の実績を見ると、印刷量の削減は31%減と、目標の50%までは道半ばだが、保管量については、保管用のキャビネットが半減した。さらに、袖机を撤去し個人ロッカーに移行したことにより、それまで140センチ幅で利用していたデスクが120センチ幅で住むようになりスペースに余裕が生まれた。空いたスペースに、ミーティングデスクや集中席などの多様なエリアを設置し、オフィス内での働き方も変化したという。

個人パソコンを活用することで投資を抑えたリモートワーク環境整備を実現

SCSKの「リモートワーク」は、全社員が対象で、月8回までは人事への特別な申請は不要だ。在宅勤務だけでなく、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務を含めて「リモートワーク」として定義している。また、在宅勤務については、自宅だけでなく一親等以内の家族の住む住居でも実施できるという。

実現にあたってはICTの活用が不可欠だが、同社ではどのように取り組んできたのだろうか。「実はデバイスなどには大きな投資はしていません。というのも、当社の社員はほとんど個人パソコンを保有しているため、個人パソコンから会社パソコンを遠隔操作することで、オフィスと同じパソコン環境で業務の遂行ができるようになっています」(南氏)。

オフィスでいつも使用しているパソコンを遠隔操作する「リモートデスクトップ環境(ターミナル接続方式)」や、サーバー上のアプリを遠隔操作する「Remote APP環境」を整備したという。いずれも、個人パソコンへのデータの保存や印刷はできない設定にし、情報の漏洩を抑止している。また、「Skype for Business」を「どこでも WORK」のための必須ツールと位置付け、社員にヘッドセットを配布すると共に、オフィスのすべての会議室にスピーカーとプロジェクターを設置し、Web会議を簡単に実施できる環境を整えた。

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「これらの取り組みの結果、毎月約3,000人が平均3回のリモートワークに取り組むようになりました。Web会議の実施回数は従来と比較して約40倍になりました」(南氏)というから驚く。

説明会の開催に加え、専用ホームページ、専用広報誌も作成

人事グループ 人事厚生部 労務課の村田宜則氏は、「『どこでもWORK』などの働き方を『やらなければ叱られる』というのではなく、社員が自発的に利用する風土が醸成されつつあります」と話す。

2019年は複数の大型台風により各地で被害が発生した。SCSKもその影響を受けたが、村田氏自身も柔軟に対応できたという。

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人事グループ 人事厚生部 労務課 村田 宜則 氏

「特に最近、台風の影響で電車が動かない日もありました。そこでも『どこでもWORK』に切り替えることにより、他部署とのミーティングなども含め、通常の業務を問題無くこなすことができました」

BCPという観点でも成果を発揮したわけだが、南氏は、「災害への対応だけでなく、市場環境の変化などに対応するためには、そのときに合った働き方に変えることを受け入れる文化を浸透させることや変化に対応できる人材育成が大切です。『どこでもWORK』はその入口でもあると考えています」と話す。ここまでSCSK の取り組みや成果を紹介してきたが、決して一朝一夕に実現できたわけではない。これまで何段階かのプロセスを経て、リモートワークの仕組みを推進させてきたからこそ可能になったと言えそうだ。

山口氏は次のように話す。「キックオフなどで経営トップがコミットメントしていることを示すと共に、社員の意識を変えたり、不安を解消したりする説明会や広報にも力を入れてきました」

説明会は55回も行われ、約3,500人の社員が参加したという。この他、「どこでもWORK」専用の社内ホームページの開設、「どこでもWORK」に特化した広報誌「どこでもWORKER」も定期的に発行してきた。

これらの地道な活動が、地に足の着いた、しっかりとした定着を実現したのだろう。

山口氏は「当社はお客さま先に常駐する社員もいます。これらの社員の『どこでもWORK』はまだ実現できていませんが、お客さまのご協力も得ながら改革に取り組んでいきたいと考えています。今後も、経営理念である『夢ある未来を、共に創る』のもと、社員一人ひとりの能力を最大限発揮できる職場を目指し、『働きやすく、やりがいのある会社』の実現に向けた取り組みを推進していきます」と結んだ。

【本記事は JBpress が制作しました】