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2020.03.16

強い組織づくりのために、注目されるテレワーク

コロナウイルス対策で加速する、テレワーク成功のカギとは

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常葉大学
経営学部 准教授 博士(学術)
小豆川 裕子氏

新型コロナウイルスの感染拡大は、世界経済の不安定さを増大させる一方で、期せずしてテレワークの導入を加速させるという副次効果をもたらしています。とはいえ、果たしてどのぐらいの企業が成功へのルートを歩んでいるのでしょうか。テレワーク成功のカギを握る組織と文化、リーダーシップなどについて、常葉大学経営学部准教授であり、日本テレワーク学会副会長、日本テレワーク協会アドバイザーなども務める小豆川裕子氏に解説していただきました。

企業は経営戦略との関係でテレワークを捉え始めた

—— 日本テレワーク協会のアドバイザーをはじめ、関連するさまざまな団体の委員などの活動を通じて企業の取り組みをご覧になっていると思いますが、テレワーク導入にあたっての環境変化や認知度、普及度合いなどについて、どうご覧になりますか。

小豆川裕子氏(以下、小豆川氏) テレワークの普及については2つの調査があります。1つは国土交通省の「テレワーク人口実態調査」です。これは1990年台後半から毎年実施している調査であり、全体の就労人口に占めるテレワーカーの割合などを出しています。平成30年度の調査によると、制度などのある雇用型テレワーカーの割合は10.8%です。

もう1つは総務省の「通信利用動向調査」で、これは従業員数100人以上の事業所を対象とした調査で、直近の平成30年の調査結果では、テレワークを導入している企業の割合は19.1%となっています。

 どこでも働けるフリーランスの増加や、兼業・副業の解禁、クラウドソーシングなど、世の中ではテレワーク的な動きが増えている一方で、政府の統計では意外と少ないという印象を持つかもしれません。

 ただ大企業に関しては、首都圏を中心にテレワークの導入が進んでいます。私は1990年代後半からウォッチしていますが、この間、何度かブームがあって、個人的には現在のテレワークブームは第6次ブームぐらいかなと思っています。

では、なぜいま進んでいるのか――。それは政府が人口減少時代を見据えて、競争力強化のために国全体でデジタル化を推進していることが背景にあります。毎年閣議決定される「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」には、テレワーク普及の目標値があります。

企業の導入率は基準となる年(2016年)の11.5%に対し、3倍の34.5%、雇用型テレワーカーの実施割合は同じく7.7%の約2倍の15.4%となっています。その実現に向けて、政府は意識改革やノウハウ支援、導入補助、周知・啓発といった普及促進活動を体系的に展開しています。ようやく大都市圏から普及定着が進みつつある中で、現在は地方と中小企業の普及促進が課題になっています。

テレワークにはいろいろな効果・メリットがありますが、特に重要なのは労働力の維持・確保です。つまり、今いる従業員の人たちに対して出産・育児・介護といった働く時間と場所に制約が掛かることをできるだけ取り除いてあげるということと、もう1つは、優秀な人材を確保するためにこうした制度をつくって、魅力を感じてもらうという2つの側面で導入が進んでいます。このことは、ようやく企業が経営戦略との関係でテレワークを捉え始めたのかなと評価しています。

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 また今は、新型コロナウイルスの感染拡大により、BCP(事業継続計画)の観点から、テレワークの導入、見直しも進んでいます。NTTグループは最大20万人を対象に時差出勤やテレワークの実施を推奨すると新聞報道にもありましたが、ああいった迅速な対応ができるのは、すでに制度としてテレワークがあったからです。有事の際にすぐにシフトできるという点で、制度導入の有効性が再認識されているのではないでしょうか。

※取材後には、電通が本社勤務の約5000人を在宅勤務に、資生堂が約8000人の従業員を原則出社禁止にするなど、多くの企業での対策が報じられた。

ミドルマネジメントの理解を促すことが成功の鍵

—— 早くからテレワークに取り組み成功している企業もあれば、なかなかうまく運用できていない企業もあると思いますが、成功するためには何が必要ですか。

小豆川氏 テレワークによる働き方改革を通じて、個人と組織のそれぞれが良い結果を生み出すには、ベースとしてICTインフラの整備が不可欠です。その上で、組織風土の革新、業務プロセスの革新、労務管理制度・ルールの整備、オフィスの改革などが必要になります。

最も重要なのは、経営戦略の中でテレワークをきちんと位置付けているかどうかで、経営トップのコミットメントが成功の必須条件ではないかと思います。その中で情報システム部門がやるべきことと、労務管理については人事部門、業務プロセスについては総務部門など、関係部門が緊密に連携していくことが大切です。

全社的なテレワークの考え方や、なぜ進めるかといったところの意味や価値を、経営トップがビジョンやメッセージとして発信しつつ、各部門がそれを受け止めて、自部門の行動へと落とし込んでいきます。企業によっては、ダイバーシティ推進室や働き方改革室といった専任部署やプロジェクトチームをつくって意思統一を図ったり、部門ごとの連携を進めたりするのも有効です。

 組織風土の革新については各部門の話になってきますが、ネックになるのはミドルマネジメントです。ミドルは悪者にされがちで、改革をやろうとしてもなかなか従来のやり方から離れられないとも言われますが、私はむしろ、彼らに理解してもらうこと、あるいは阻害要因を排除し、彼らへの支援が大事だと考えています。

 ミドルマネジメントの理解を促すことによって、各部門のビジネスの複雑さや特性を踏まえたテレワークの導入が可能になります。メンバーの意識共有が進み、自律性や主体性が生まれ、特に出産・育児といったライフステージ上の特別な理由がなくても、それぞれの人が生産性高く仕事をするようになります。そして、他社配慮・相互支援の組織風土が醸成されることも期待されます。

 もう1つ重要なことは、働き方改革の多くが労働時間の削減を主眼としていますが、仕事の量と質、仕事のやり方や人のアサインなどを考えないでやると、かえってサービス残業を増やす結果につながり、現場の負担が大きくなるとの指摘もあります。業務の可視化を通じて、無駄な仕事を削減したり、知識・情報の共有を進めたりすることもテレワークの成功には重要なポイントです。

—— テレワークの導入に前向きになれないミドルマネジメントの意識改革が難しそうですが、どのような支援が効果的ですか。

小豆川氏 先進的企業では、最初は気が進まないミドルマネジメントに週に1回は必ずテレワークを実施するとか、管理職は全員必須で行なうなどをトップダウンで行っています。そうした取り組みは初期段階ではとても重要です。部門や職種によっては、一時的に生産性が落ちることもあるかもしれませんが、ミドルマネジメントの理解を深め、課題や促進策を共有するためにも必要です。

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 よく部下がサボっているのを管理できないという指摘があります。一方ではテレワークで自分がサボっていると思われないために予実管理をするようになり、オフィスでは見えなかった進捗状況が常に見える化できるようになったとのことで、安心して仕事を進められるとも言われています。そうしたことも含めてとにかく早くテレワーク環境に慣れてもらうことが一番です。

地方や中小企業がテレワークに取り組む意義とは

—— 成功するための組織づくりとしては、経営トップのミッションを持った専任組織を置いて、情報システム部門や人事部門、総務部門との連携を図っていくことが重要とのことですが、導入後はどのような点に注意すればいいですか。

小豆川氏 最初は3~6カ月のトライアル期間を設けて、進捗状況や実際の効果を測定します。企業の観点からは生産性がどうなったか、労働時間が削減されたかをチェックし、個人の観点からは、生産性以外にもワークライフバランスの状況、プライベートで家族や友人とともに過ごす時間や、一人で自由に使える時間、育児や家事に費やす時間、自己啓発に費やした時間などを聞きます。この他、全体の満足度や、「この会社で働いていて良かった」といった帰属意識などについて聞いたり、IT企業などでは離職率との相関についても分析したりしています。

—— 組織や文化、リーダーシップの観点からテレワークが成功している事例を教えてください。

小豆川氏 意識改革の面で私がよく取り上げるのがサントリーホールディングスです。同社はワークライフバランス、コンプライアンス、心身の健康を基本的な考え方に据えて、ワークスタイルの革新に取り組んでいます。その中で「S流仕事術」というのがあり、「ITのパワーを最大限に活用し、働く場所と時間の概念を大きく変えて、決めた時間で最大の成果を出していこう」と当時の常務執行役員人事部長がメッセージを発信しました。

 特筆すべきは、進化したITツールの活用を目的に、ウェブ会議やテレワークなどの仕組みや制度を提供するだけでなく、徹底的に利用しましょうと働きかけていること。もう1つは、意識・風土の醸成を図るための「ナレッジボックス」を設置し、各人が編み出したアイデアを蓄積したりしているのです。意識を変革し、行動を促した好事例と言えます。

—— 先生が審査員を務めた日本テレワーク協会の「第20回テレワーク推進賞」にも、ユニークな企業・団体が並んでいますね。

小豆川氏 会長賞を受賞したNECはテレワークの老舗的企業です。1986年のサテライトオフィス導入以来、研究職限定の在宅勤務制度の導入を経て、トライ&エラーを重ねて、実施規模は現在2万人規模に増加し、全社員の81%が在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務を実施しています。全国のグループ拠点にサテライト席を設置した他、民間の外部シェアオフィスも活用するなど、選択肢の幅を広げており、さまざまな関係者から注目を集めています。

—— 今後の課題にも挙げられた、地方の企業と中小企業がテレワークに取り組む意義について伺います。

小豆川氏 特に地方では人材の確保・維持が喫緊の課題です。今いる従業員を大切にし、仕事を続けてもらうかというところでテレワークという選択肢に気付いていない企業も多いと思います。そうすると、産休に入って育児休業を取るといったときに、本当に会社として困るところもあって、優秀な人材には早く戻ってきてもらいたい。そのためには、どこでも働けるような環境を整備することが重要です。子どもを保育園に預けるとしても、在宅勤務にして行き帰りの通勤時間を削減できるメリットは大きいです。

 あとは介護に直面している方が本当に多いので、企業の中核人材を維持・確保するためにテレワークが有効だということをもっとアピールしていくことも重要だと思います。国や地方自治体がテレワークの普及促進に向けた施策では、個別のコンサルティングを無償で提供していますので、そういった公共サービスもぜひ活用いただきたいです。

【本記事は JBpress が制作しました】

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