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【イベントレポート】HP デジタルマニュファクチャリング サミット

〜3Dプリンターによる、ものづくりのデジタル革新〜

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近年、3Dプリンターを活用した「ものづくりのデジタル化(デジタルマニュファクチャリング)」を推進する企業が増えています。日本においても、ものづくりにおける多くの課題の解決策としてデジタルマニュファクチャリングが注目を集めるなか、日本HPは、その重要性や財務効果、国内外の成功事例を紹介するイベントを2019年10月25日に開催しました。冒頭に登壇した日本HP 代表取締役・社長執行役員の岡 隆史氏は、同社の次の成長分野の一つがデジタルマニュファクチャリングであり、グローバルのHPでもスペインのバルセロナに3Dプリンティング・デジタルマニュファクチャリングセンターを開設したことを紹介しました。そして、HPのパートナー企業様とともに、新しいものづくりの世界を作っていきたいと、本イベントの開会を宣言しました。

デジタルマニュファクチャリングによる経営変革

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デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 執行役員 藤岡 稔大氏

最初の講演では、HPの3Dプリンティングソリューションのグローバル・パートナーであるデロイト トーマツの藤岡氏が登壇。製造業において、1970年代から2000年代は電気による自動化が行われ、第3次産業革命と呼ばれていました。2010年からは、デジタル技術によって起きた第4次産業革命のなかにある藤岡氏は言います。しかしながら、2010年から2018年における製造業の生産性は低成長であり、現在はデジタル化の試行錯誤・模索の段階にあるとし、たゆまぬ試行錯誤に成功した企業は、2030年にかけ生産性の大きな向上を得られると語りました。

藤岡氏は、工場のデジタル化に魅力を感じているものの、導入に対する悩みを持つ経営層は多いと言います。こうした経営者に対し「10年後、20年後の将来どんな工場にしたいか」というイメージを描き「いま実現できないもの、できるものはなにか」という発想ですすめるべきであるとアドバイスしました。

これまでの3Dプリンティングは、設計・試作への適用が主となっていましたが、顧客ニーズに応じたカスタマイズ、消費地でのオンデマンド製造によるサプライチェーンの刷新など、適用範囲を広げていくことで新たなビジネス・エコシステムを作ることができると藤岡氏は語り、同社が手がける「3Dプリンター適合性診断プログラム」の説明を製品開発チームの萩原氏に譲りました。

萩原氏は、3Dプリンティングは試作やプロトタイピングに導入することが多く、量産化には、技術・品質の壁、創出効果の壁、オペレーションの壁、と3つの壁があると現状の問題を提起しました。とくにバリューチェーン全体に波及する効果や投資規模を算定するうえで獲得できるノウハウが乏しく、専門家の調査検証が必要と説明します。

こうした課題に応じるのが「3Dプリンター適合性診断プログラム」です。HPのテクノロジーとデロイトが持つデータや知見を生かし、6週間に亘って、3Dプリンティング化対象パーツや素材を選定し、サプライチェーンや基盤やオペレーション像の検討、投資対効果の試算、実証検証フェーズの企画提案がなされます。適合する場合は、6か月の実証検証フェーズに進み、その後の本格展開を目指していきます。

萩原氏は最後に、製造情報、技術仕様、サプライチェーン情報など、必要なデータをたくさん集めれば集めるほど診断の精度が高まるとし、レポートを作る過程で自社が目指す方向性、ビジネスインパクトを捕まえて、視座視点を高めていただきたいと呼びかけました。

HPが推進するデジタルマニュファクチャリングのネットワーク化

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日本HP 3Dプリンティング事業部 事業部長 秋山 仁 氏

続いて登壇した日本HPの秋山氏は、同社内のものづくりにおいて、「HP Jet Fusion 3Dプリンター(Jet Fusion)」を積極的に活用したデジタルマニュファクチャリングを推進しているとし、グローバル製造ネットワーク「Digital Manufacturing Network」のコンセプトと、その可能性についての説明を始めました。

現在、製造業には製品ライフサイクルの短縮、多品種少量生産、製造拠点のネットワーク化などが求められており、3Dプリンティングがこれらをサポートできると秋山氏は語ります。そして、Jet Fusionなら、造形スピードの速さ、強度、コスト面などで優位にあると説明。プロトタイピングだけでなく、最終製品の製造も可能なため、設計から製造までをシームレスに実現し、柔軟な生産計画の実現や性能の向上、従来できなかった新しい製品ができる可能性をもたらすとしました。

HPでは、治工具(機械加工などにおいて工作物を制御、案内する装置)での活用をすすめており、プリントヘッド加工治具をアルミから置き換えることで、コスト削減や軽量化、性能の向上もできた実例を紹介。また治具だけでなく、ロボットが使うアーム部分などのパーツ改良もおこなわれているとしました。

Jet Fusion自身も、3Dプリンティングにより最適化されたパーツを活用しています。設計段階で300点だったパーツ点数を140点に減らすとともに、肉抜きによる軽量化、製造中の熱のこもりを防いで精度を上げるなどによりパフォーマンスの改善を実現。当初射出成形での設計だったプリントヘッドは、DfAM (Design for Additive Manufacturing。積層造形の設計)による最適化設計により、稼働スピードが14.8%も向上したといいます。

このほか、他社の成功事例として、自動車部品や歯科医院に行かずに歯列矯正できる矯正アライナー、美容機器、カスタマイズされたインソール、水中葉のVRヘッドセット、自動車組み立て作業員向けの3Dグローブなどが紹介されました。

HPでは、3Dプリンターの生産性向上をおこなうとともに、業界標準の認証の取得、厳格な品質管理、量産体制づくりをサポートするためのプロダクションパートナーのグローバルコミュニティー「Digital Manufacturing Network」を組織しています。秋山氏は本イベントにおいて、国内初のパートナーとして、SOLIZE Productsが加盟することを発表しました。

3Dプリンターを活用した自動車部品の量産適用に向けて

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SOLIZE Products AMシステム事業部 事業部長 乃村 嘉裕氏

続いて登壇したのは、「Digital Manufacturing Network」加盟企業であるSOLIZE Productsの乃村氏。SOLIZEグループは、1990年から3Dプリンター装置販売保守やプリンティング受託サービス展開する企業で、2018年からHP Jet Fusionを導入、販売を行っています。

同社がJet Fusionを提供した事例として乃村氏は、OUI社によるスマートフォンで眼科検診ができる「Smart Eye Camera」、JVCケンウッドによるアフターパーツ提供の検証、トヨタ自動車によるAIバスケットボールロボット「CUE3」を紹介しました。

そして乃村氏は、3Dプリンティングが自動車部品へ多く活用されるようになっていると説明します。2018年までは、重要保安部品ではない小ロットの内外装パーツに採用されるようになり、2019年には一部の機能性部品や、生産が終了してしまったアフターパーツの製造、そして2021年ごろから本格化する新型EVでは多くの部品に採用されることが予想されるとし、MINIやBMW、ランドローバーの取り組みを紹介しました。

3Dプリンティングを先んじて採用している企業は、トップダウンで技術開発するとともに技術者を育成し、DfAMの積極的に活用するとともに、生産とサプライチェーンの最適化に取り組んでいるといいます。乃村氏は、SOLIZE ProductsでもDfAMの支援を行うとしました。

Jet Fusionにおける3Dプリンティングの特徴として、造形の高さと造形時間が固定されていることが挙げられます。たとえば、大きなパーツ5個の造形と、同じ体積の中に数種類の細かなパーツを加えて500個以上の造形をおこなうのも同じ時間できます。乃村氏は、製造の効率を高めるため、製造パーツの充填率をあげていくことが重要だとしました。

2016年12月に下請法が改正され、金型・木型の保管コストは親事業者の負担になり、2018年にはこれが徹底されることになります。製造業においては、経済産業省の推進する型管理の適正化に対応するため、金型のない生産や、補給部品の3Dプリンティングによる提供が急務とされています。

こうした背景のなか、SOLIZE Productsでは、HPとのパートナーシップにより補給部品や量産部品適用向けの3Dプリンティング適用コンサルティング業務を開始。適用部品選定から補給部品の生産・供給まで一貫対応するサービスを提供しています。製造業が抱える多数の部品から3Dプリンティングで代用可能なもの絞り込み、DfAMの取り組みによって適用部品を拡大していくというものです。

同コンサルティングでは、候補部品をもとに、製造のためのさまざまなシミュレーションを無償提供し、各種試験片、性能評価試験モデル、耐久試験モデルを特別価格で提供します。さらに、顧客の開発部門向けに、DfAM活用プレゼンテーションが展開されるとし、乃村氏は活用を促しました。

JVCケンウッドが推進するデジタルマニュファクチャリングの取り組み

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株式会社 JVCケンウッド SCM部 スマートファクトリー 推進グループ 久家 浩志 氏

JVCケンウッドでは、生産革新の一環として、2010年から各種試作や治具などに3Dプリンター造形パーツの適用を進めてきました。2013年に3Dプリンターのブームがあり、それ以降はグループ各社での利用が高まり、当初の試作検討から量産検討の活動をしています。工場で稼働するロボットのハンドや台座部分を3Dプリンターで造ることで、短時間でのシステム構築を実現しています。

久家氏は、同社が3Dプリンターによる量産に着目する理由について、従来の民生品の需要低下による新規商品開発や、B2B商品の各顧客対応の必要性により、金型のコストがかかってしまうことを挙げました。加えて下請法改正による、金型管理負担の増大も懸念されます。そこでHP Jet Fusion 4200を採用。その決め手は、強度や素材、レーザーを使わないことなどでした。現在も日本HP社内での量産活用の知識や、SOLIZE Productsからの造形知識のサポートを活かした取り組みを行っています。

3Dプリンターの量産活動に取り組みを通じて久家氏が感じた課題は、導入に消極的な設計者の存在でした。導入のためのディスカッションで出てきた意見は「新しいものは不安だからやりたくない」といった理由のものが多く、久家氏はそれに対して一つひとつ提案することで導入を促していったと言います。その提案とは、「部品点数を減らせるので組み立て箇所を減らせる」「金型も削減できる」「いざとなったら金型に戻れる」といったものです。また設計者ばかりでなく経営者も交えた講演会も実施し、課題を感じている経営層にアピールし、結果的にトップダウンで取り組むことが決まったといいます。

また、久家氏がもうひとつ感じた課題は、サービスパーツの提供です。本来なら、在庫が不要で足りなくなったら増産すべき部品のため、部品や金型自体の管理費用が削減できるメリットがあります。しかしながら、射出成形を前提とした部品と比較すると、3Dプリンターで造る部品はコストが高くなってしまい、パーツがない現行部品の場合は後継機をお勧めしているといいます。

とはいえ、何が起きるかわからないという発想から、気になったらとにかく3Dプリンターで造る実験をおこなっているという同社。今後の課題として久家氏は、業界標準の信頼性試験、出荷検査・保証、DfAMの学習を挙げ、業界関係者が一丸となって推進していきたいと呼びかけました。

NETFABBが加速するHP Jet Fusionでのデジタルマニュファクチャリング

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オートデスク デジタルマニュファクチャリング セールス 積層造形プロダクトスペシャリスト ピーター・ロジャーズ氏

オートデスクが提供する「NETFABB」は、設計の最適化に加え、HP Jet Fusion用のビルドを効率よく高精度に準備できるツールです。ロジャーズ氏は「NETFABB」について、ワークフローが合理化され、造形エラーが減るため、製品の市場投入までの時間を短縮することができるとしました。

ワークフローの初期段階である設計についてロジャーズ氏は、どのように材料を配置すれば最適な構造となるのかといった「トポロジー最適化」や、格子状にして強度を保ちながら部材費用を抑えられる「ラティス」、そして造形の限界や求める性能に基づいた複数のCADデータを同時に生成できる「ジェネレーティブデザイン」の3つの手法を説明。なかでもジェネレーティブデザインは、複数の素材や荷重の組み合わせ、複数の製造方法、パーツの統合などの設計を自動で行える柔軟性と利便性を持っているとしました。

分光光度計アクチュエータという部品の事例紹介では、アルミ切削用の場合の設計時間が8時間で、重さ355gに対し、3Dプラスチック・ラティス入りでは設計時間8時間で重さ55g、プラスチック・ジェネレーティブデザインでは設計1時間で重さ23gと、実に50%のコスト削減、93%の軽量化、95倍の温室効果ガス排出量の削減、85%の設計期間削減につながったと説明がなされました。

続いてロジャーズ氏は、設計後、3Dプリンターに出力するワークフローにおいての課題も提起しました。出力にあたっては、設計データの変換、薄肉チェック、粉抜きチェック、3次元パッキング、パッキング距離チェック、レイヤー密度チェックなど、多くの工程が必要とされます。HP Jet Fusionではパッキングを工夫することにより同時に数百個の部品を作れるとはいえ、その準備に時間がかかってしまいます。また、世界中で複数の拠点で出力する場合、各拠点の担当者にこれらの工程を依存すると、品質の均一化が保てなくなるという懸念もあります。

これらの問題を解消するのが、スクリプトによる準備プロセスの自動化です。各拠点にはスクリプトを実行できる人だけがいればよく、ロジャーズ氏は、品質の標準化とコスト削減が両立できるとアピールしました。

世界のデジタルマニュファクチャリングをリードするHP。日本の製造業の導入を支援

イベントではこのほか、ヤマトロジスティクスによる3Dプリンターを活用したアフターパーツの生産・物流最適化の構想やHP Jet Fusionの販売パートナーであるリコージャパンによる、警備・防犯・安全用品などの企画から製造、そして販売をおこなう最終製品の事例展示、オートデスク「NETFABB」の説明、武藤工業によるJet Fusionで作成した各種パーツの展示が行われました。

結びの挨拶で再び登壇した日本HPの秋山氏は、HP Jet Fusionがデジタルマニュファクチャリングを推進しているとし、世界では2019年5月〜7月期には実に500万以上のパーツが造られ、装置で使う樹脂材料の消費量も伸びていると説明し、これに日本の製造業も追従してほしいと呼びかけました。

3Dプリンターで製造された、VR空間での触感再現デバイスのデモ

〜HPのワークステーションとVRヘッドセットで体感

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会場のHP展示ブースでは、VR空間の物体に対し、手で触っている感覚を再現するデバイス「EXOS Wrist DK2」(exiii社製)の展示がありました。日本HPのサービス・ソリューション事業本部 技術本部の清水康輔氏は、EXOS Wrist DK2は、手首につけるデバイスで、ボディはHP Jet Fusionで出力されたものであると説明。

EXOS Wrist DK2はHPのラップトップ型ワークステーションとWi-Fiによって接続され、ヘッドマウントディスプレイの「HP Reverb Virtual Reality Headset」でVR空間を見ながら、コントローラーを操作することで、電動ドライバーや拳銃、鉄球を降り回すなどの動作を体験できるというデモンストレーションを行っていました。筆者も体感しましたが、EXOS Wrist DK2をつけた手首にはしっかりと反動が伝わる不思議な感覚を味わいました。

日本HPのパーソナルシステムズ事業本部ワークステーションビジネス本部長である大橋秀樹氏は、従来ワークステーションで造られた設計データは、CAMのアプリケーションに渡して旋盤の機械を使って金型製造していたが、現在ではCAMではなく直接3Dプリンターに渡せるようになったと説明。これにより金型を経由しない新しいワークフローが実現し、EXOS Wrist DK2のような試行錯誤が必要な製品の開発に役立っているといいます。

企業のVR活用について大橋氏に聞くと、製造業や建築関係においてVR空間でのデザインの共有・コラボレーションなどは通常行われているとしました。VR環境の構築という面では、これまで、センサーがついたVR用の部屋まで行く必要がありました。外部センサーを必要としないヘッドセットである「HP Reverb Virtual Reality Headset」であれば、ラップトップのワークステーションと組み合わせることで、今回のような展示や意思決定者へのプレゼンテーションも場所を選ばず手軽に行えると説明しました。

HP Reverb Virtual Reality Headsetは、片眼の解像度が2Kと高精細な表現力を持っています。これをストレスなく動作させるためには、NDIVIAの「QUADRO」など、高性能のグラフィックカードをサポートするワークステーションが必要です。展示ブースのワークステーションも最高クラスのグラフィックカードを搭載しており、今回の展示のような設置は3分〜4分で可能と清水氏はその手軽さを強調しました。

さらに大橋氏は、EXOS Wrist DK2のようなデバイスがあれば、いままでVRでは難しかった「触る」という体験ができ、コミュニケーションの幅も広がっていくと述べました。また、本イベントの主題である3Dプリンティングについては、試作から製造までの納期を短くでき、小ロットの多品種生産を実現し、金型保管もかからないといったメリットを重ねて強調しました。

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