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2020.05.29

HP Indigoエレクトロインキ – 常識を覆す利便性と高付加価値

HPデジタル印刷機がもたらす革新 2

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最新のHPデジタル印刷技術がもたらす世界を、さまざまな視点からクローズアップする連載「HPデジタル印刷技術がもたらす革新」。2回目は、印刷の世界をより進化させるテクノロジーとして開発された「HP Indigoエレクトロインキ」の特長から、HPが仕掛けるデジタル印刷の革新を、株式会社 日本HPデジタルプレス事業本部 ソリューションアーキテクト 土田泰弘氏が解説する。

デジタルプレス事業本部 ソリューシアーキテクト
土田 泰弘

工学系大学院卒業後、印刷会社に入社、その後海外プリプレス機器メーカー・デジタル印刷機メーカーを得て、2009年よりHPで産業用デジタル印刷機を担当。
近年は、ラベル&パッケージ向け製品技術やプリセールスを担当。また、国内外のナショナルブランドへのデジタル印刷技術活用のコンサル業務・啓蒙活動を展開することで、パッケージ市場のデジタル化推進に取り組んでいる。

HP Indigoに搭載される革新的インキ

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HP Indigoのコアテクノロジーと言えるのが、液体トナー「HP Indigoエレクトロインキ」です。この液体トナーをオフセット機構で印刷しているため、約1ミクロンという非常に薄い膜で高精細の印刷を実現しています。

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HP Indigoエレクトロインキと、従来の粉体トナーとの比較では、その仕上がりの違いは明らかです。網点を拡大してみると、HP Indigoエレクトロインキはくっきりと美しく描かれていることに対し、粉体トナーはギザギザと不安的な形状であることがわかります。また、他の一般的な印刷方式では、網点が用紙やフィルムに転写される際のドットゲインが問題となりますが、HP Indigoエレクトロインキでは機械的なドットゲインはほとんど発生しません。また網点再現の美しさ以外にもHP Indigoエレクトロインキの「薄さ」は用紙自体の持つ風合いを良く残し、用紙に転写する前にブランケット上で乾燥させる為、インク量による乾燥の心配がなく、等速で生産性を損ねることもありません。

美しい仕上がりと生産性を両立したHP Indigoエレクトロインキには、どんな秘密が隠されているのか?実際にHP Indigoエレクトロインキの構造や利点を詳しく説明していきます。

手間なく簡単にインキの切り替えが可能

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HP Indigoエレクトロインキは、液体キャリアと呼ばれるオイルの中に、わずか1~2ミクロンのトナー樹脂が分散しています。この樹脂の中に顔料がカプセル化されているのが、特筆すべき構造といえます。これは「おにぎりと具材」の関係をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。おにぎりは具材を変えることで味を変えることができますが、実はHP Indigoエレクトロインキもカプセルのように内包された顔料を変えるだけで、さまざまな色を再現できるという特徴を持っています。たとえば従来のインキジェット印刷の場合、色や顔料を変更すると、インキジェットのヘッドを最適化や、再設計が必要となるケースもありました。それに対してHP Indigoエレクトロインキは、こうした手間に時間を取られることなく、容易に色のバリーションを開発することが可能です。

豊富なインキバリエーションが無限の色域を再現する

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美しい仕上がりを生み出す理由は、デジタル印刷機種の中でも屈指となるインキの豊富さ。まずオフセットで用いられるCMYK。さらにオフセットでは弱い色域を広げる補色として、オレンジ、バイオレット、グリーンも標準装備されています。

そのほかにもHP Indigoエレクトロインキの利点として、白インキの使いやすさも上げられます。そもそも白インキは金属顔料であり、インキジェットでは「吐出や制御が難しい」という問題がありました。合わせて乾燥や定着も難しいインキです。しかしHP Indigoエレクトロインキは液体トナーであるため、こうした問題は起こらず、乾燥もブランケット上で完了する為、白インキを手軽に使用することができます。

さらに白にも種類があることも特徴です。インキジェット方式でも、白インキが使えるものも存在しますが、恐らく1機種1種類が基本ではないかと思います。それに対してHP Indigoエレクトロインキの場合は、実に3種類の白インキ(2020年5月時点)がラインナップされています。

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まず標準装備である「スタンダードホワイト」は、乾きが早く、インキ膜厚も薄いので均一で美しい仕上がりを実現できます。シュリンクスリーブに最適な「スリーブ用ホワイト」は、低摩擦のインキ表面を実現しました。これはボトルに装填する際に、摩擦でスリーブがボトルに引っかかってしまうなどのトラブルを防ぐことができます。そして「プレミアムホワイト」は、スタンダードホワイトの約2倍の隠蔽度でグラビアインキのように高隠蔽で透けないという特徴を持っています。

●ビビットインキ
ビビットインキは、CMYKとのセットではるかに明るい色を再現し、オフセットでは表現できない色域をカバーします。昨今はスマートフォンをはじめとするデジタル機器の普及やウェブメディアの発展により、人間の目がモニターで表現する色=RGBに慣れているため、印刷でいかにRGBの世界を再現するかという点は大きな課題でした。またクリエイターやデザイナーもモニター上で作業を行うことが一般的になり、これまでのCMYKのみによる印刷ではイメージした色を表現できないということも問題でした。

そこでCMYKをRGBの領域に近づけるものとして、ビビッドインキの中でもビビッドピンク、ビビッドグリーンという色が注目を集めています。通常のCMYKにピンクとグリーンという色域をプラスすることによって、鮮やかな色を再現することが可能となりました。副次的な要素としてグリーンとピンクの掛け合わせで、鮮やかなブルーも再現できます。もともとはインド市場において、サリーの美しさを印刷で再現するために誕生したインキですが、昨今は特にコミックの世界でもクローズアップされており、今後の広がりが期待できます。

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●シルバーインキ
シルバーインキは金属顔料を使用するため、電気を通す性質があります。特に電子写真方式のHP Indigoデジタル印刷機は、電気の力を利用して現像するため、シルバーインキの実現は険しい道のりでした。

多くのハードルを乗り越えて実現したシルバーインキは、パントンメタリック#877相当の中輝度のメタリック感が特徴です。単色としての美しさはもちろんのこと、インキ膜厚の薄さが特徴のHP Indigoエレクトロインキで上からカラー印刷を行うことで透過度のあるメタリックカラーを再現できることも利点です。

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●特練インキ
コーポレートカラーへのこだわりなどは、ブランドイメージを広める意味でも大事な要素です。HP Indigoエレクトロインキは、豊富なインキバリエーションを活かし、ブランドのニーズにマッチした特色を調肉することが可能です。

●インビジブルインキ
紫外線で黄色と青色に発行する特殊インキです。通常、印刷箇所は一見では分かりませんが、特定の波長の紫外線ランプを照射することで、黄色や青の色が浮き上がります。主にセキュリティ用として用いられます。

●耐光オレンジインキ
オレンジや赤系の顔料は紫外線で退色しやすいという特徴がありますが、これを解消するために開発されたインキです。通常のオレンジよりも紫外線で退色しにくく、高い耐光性を持つことが特徴です。すでに販売をしている耐光マゼンタ、イエローと合わせた耐光インキセットです。

●示温インキ(技術展示のみ)
温度で色が変化する顔料を使用したインキです。たとえば飲料のボトルに使用した場合、冷えている状態か、暖かい状態かを色では判別できます。こうした特性から、将来的には飲料や食品ラベル関連への普及が期待されます。

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●スクラッチ印刷用イージーリリースインキ 
コインで簡単に削ってはがれるスクラッチ用のインキです。隠蔽のための墨インキや白インキを重ねつつ、合計で9層の印刷を行います。スクラッチ面の形状に制約はなく、可変デザインも可能であることもHP Indigoならではの特徴です。

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CMYKの基本色のみでRGBの色域を再現

HP Indigoカラーアップ

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カラーアップは、RGBの色域再現するためのツールです。RGBの再現にはビビッドインキを用いる手法をご紹介しましたが、カラーアップはCMYKのインキだけで、さらなる色域を広げるというテクノロジーです。

具体的にはRGBの色を再現する際に、CMYKでは対応しきれないガモット(再現色領域)の部分を自動的に判別し、CMYのインキに置きかえて別版を作るというものです。たとえば海や空の青さが強調されている箇所に、シアンを2回塗り重ねることで色域をさらに広げるといった処理を自動で行います。

このテクノロジーを支えているのは、HP Indigo共通のシングル印刷エンジン。1回の転写で最大16層のインキを転写できるため、CMYK+CMY+C、CMYK+CMY+C+Cといった印刷も可能となっています。こうした複雑な処理をワンタッチで気軽にできることも、HP Indigoの特長と言えるでしょう。