2020.02.20

見る人の心をつかむデザインとは?色彩心理学に基づく効果的な色選び

色には、それぞれ特徴やもたらす効果が異なります。色彩心理学をきちんと理解することは、色が人に与えるイメージを有効に活用できるでしょう。そのため、狙い通りに、見た人の心理を誘導する効果的なデザイン制作には欠かせないものだと言えるのです。Webサイトや商品パッケージなどに使う色を考えるときは、色による効果を考えながら選ぶようにしましょう。

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Webサイトや商品のデザインにおいて、色彩が見る人の印象に大きく影響していると感じている人は多くいるでしょう。しかし、具体的な効果まではわからないため、結局イメージや好みで色を選んでいるのではないでしょうか。この記事では、色彩心理学から色が持つ特徴を分析し、より効果的な色選びのコツについて紹介していきます。

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色彩心理学に基づくデザインの効果とは

色には、それぞれが持つ効果があります。色の違いによって、人の行動や心理にも影響を及ぼすのです。世の中の製品や企業ロゴの色は、作り手によって配されたものですが、それが与えるイメージが定着している場合もあるでしょう。人は色の持つイメージに無意識に誘導されてしまうことが多いので、企業がお客様に与えたいイメージの色を配色することで、その意図通りの結果が得られることも考えられます。このように、色が人々に与える影響を研究するのが色彩心理学です。

しかし、色は人に大きな影響を与えると知られているにもかかわらず、色彩心理学は日本ではまだ学問として確立されていません。日本で色彩心理学について研究をしているのは民間団体ばかりなのです。色彩心理学を学ぶことは、ビジネスやマーケティング戦略において重要になります。色彩心理学を学んでから商品やWebサイトなどを見ると、使われている色で、どのように見る人を誘導したいのかがわかるでしょう。ビジネスを成功させるには、色のイメージだけでなく、その色が見る人に与える効果を意識して、戦略的な配色を考えることが大切です。

色が人の心理に与える影響とは

人は毎日のように周りの色から心理的・生理的に影響を受けながら生活をしています。あらゆる製品や家具、道路、目につく物を振り返ってみると、どれもそれぞれに色がつけられていることがわかるでしょう。膨張色と収縮色、暖色と寒色などのように、色によって人に与える影響は異なるのです。ここからは、色が人の心理に与える影響について解説していきます。

膨張色と収縮色

色によっては生理的錯覚を引き起こすものも存在します。たとえば、生理的に錯覚を与える代表的な色の特徴で、よく「白い服は膨張色だから太って見える」といわれるものがあります。細身の人が着用していても、太って見えてしまうことから、洋服の色として好まない人も多くいるでしょう。このような錯覚を与える色を「膨張色」といいます。白だけでなく明るい黄色やクリーム色、ピンクなど明度の高い色は大きく膨張して見えるため、そのようにいわれることが多いです。逆に、明度の低い暗い色は周りに比べて小さく収縮して見えるので「収縮色」と呼ばれます。黒色や灰色などがその代表的な色と言えるでしょう。

暖色と寒色

暖色と寒色というカテゴリに分けることもできます。一般的に知られた色の特徴で、赤、橙、黄などは見るだけで温かさを感じるため「暖色」と呼ばれているのです。一方、青、青緑、青紫などは寒さ、冷たさを感じるため「寒色」と呼ばれます。また、暖色と寒色は同じ平面上にあった場合、飛び出しているように見えたり、引っ込んでいるように見えたりと、見え方が異なるのです。周りより飛び出して見える暖色は「進出色」と呼ばれ、奥に引っ込んで見える寒色は「後退色」と呼ばれています。

陽気な色と陰気な色

明度と彩度がともに高い色は陽気なイメージを持ち、明度と彩度が低いくすんだ色は陰気なイメージを持つでしょう。たとえば、一口に赤と言っても、その赤はすべて同じ色ではありません。同じ赤でも陽気な赤と陰気な赤があるということです。明度と彩度が高ければ陽気な赤になり、反対に明度と彩度が低ければ陰気な赤になります。ポップでかわいらしい、華やかなイメージを出したいときには陽気な色を、シックで大人っぽいイメージを出したいときには陰気な赤を使用すると効果的です。

興奮色と鎮静色

赤みの強い色で明度・彩度ともに高い赤やオレンジは「興奮色」と呼ばれます。このような興奮色は、心拍数を上げ気分を高揚させる効果を持つのが特徴です。一方、青みが強く明度・再度が低い色は「鎮静色」と呼ばれます。心拍数を下げて心を落ち着かせる効果を持っているのです。リラックス効果を得たい場合や、集中力を増したい場合には鎮静色がおすすめになります。

重い色と軽い色

また、重い色と軽い色という表現で色を分けることもできるでしょう。黒や茶、紺など明度が低い暗くくすんだ色は重い印象を与え、明度の高い明るい色は軽い印象を与えるのです。洋服で考えると、秋や冬など寒い季節にはくすんだ色を選ぶ人が多く、春や夏などの暑い季節には明るい色を選ぶ人が多くなります。重い色と軽い色では、見る人に与える印象も大きく異なるでしょう。

強い・硬い色と弱い・柔らかい色

さらに、強い色や硬い色、弱い色や柔らかい色という分け方もできます。色相にかかわらず、彩度が高い色、いわゆる濃い色は強く硬い印象を与えるのです。一方、パステルカラーと呼ばれることもある明度が高い色は弱く柔らかい印象を与えます。

各色の持つイメージと効果

それぞれの色には、色ごとに異なるイメージと効果が持たれているでしょう。ここからは、具体的な色ごとに、その色が持つ特徴や、人の心理への影響について分析していきます。

赤が持つ心理効果

赤は強いエネルギーをイメージし、リーダータイプの人に好まれる色です。強さ・積極的・情熱的・生命力・愛など、エネルギッシュなプラスのイメージがあります。一方で、怒り・嫉妬・危険・攻撃的などのマイナスイメージを与える可能性もあるのです。赤色を効果的に使用することで、やる気を奮い立たせたり、興奮状態にしたりすることができるでしょう。ほかにも、暖かさや情熱、リーダーシップを感じさせることも可能になります。

赤は暖色の代表的な色であるといわれ、実際に赤色で囲まれた部屋は、体感温度が数度上がるという実験結果もあるようです。この効果は赤色が交感神経を刺激することで、脈拍や体温が上がるためだといわれています。そのため、冷え性対策などへの利用が効果的です。

橙が持つ心理効果

橙は太陽や炎のような明るくあたたかいイメージがあり、陽気で人付き合いがよく社交的なタイプが好む色になります。暖かさや明るさのほかにも、元気や親和、陽気さなどのプラスイメージがあるでしょう。一方、安っぽいイメージやわがままなイメージなど、マイナスなイメージもあるのです。そのような橙は食欲を増進させたり、元気づけたりする効果を期待できます。飲食店のインテリアやwebデザインに使用されることも多い色です。また、親しみやすさを感じさせる、気分を明るくさせる、暖かいイメージを与えることも可能です。不安や恐怖を感じやすい人にとっては、橙を見ることで心身のバランスを整える効果を期待できます。

黄が持つ心理効果

黄は見る人を明るい気持ちにさせる効果がある色です。元気や輝き、希望に加えて、賑やかや若さなどのプラスイメージを与えます。また、知識欲を刺激する、若々しい印象を与える、注目を集めるなどの効果を期待できることから、自己アピールの強い人が好む傾向があるのです。特に、黄色は左脳を刺激する色として知られているので、理解力や判断力を高めることも期待できます。一方、マイナスイメージとしては、幼稚さや希薄さ、危険や注意などが挙げられます。踏み切りや立ち入り禁止の看板にも、黄色が使用されていることからも、危険を表すイメージ色としての効果を期待できることがわかるでしょう。

緑が持つ心理効果

緑はバランスと安らぎの色です。暖色と寒色の間の「中間色」ともいわれます。また、平和・調和・安らぎ・生鮮・自然などのプラスイメージがある一方、疲れ・弱々しい・未熟などのマイナスイメージを与える色です。緑にはリラックスさせる、疲労回復、ストレス軽減のほかにも、安心感を与える、落ち着かせるなどの効果を期待できるといわれています。刺激が少なく、リラックス効果の高い色であるため、赤色が与えるイメージとは反対の意味合いを持っているのが特徴です。活動的な人には、あまり好まれない色かもしれません。

青が持つ心理効果

青は心身の興奮を鎮める鎮静と抑制の色です。誠実・冷静・知的・爽やか・涼しげなどの印象を与えることができます。そのようなイメージから、青はインターネットで最も人気の色といわれ、企業ロゴにも多く使われているのです。興奮を抑えて落ち着かせる、信頼感を与える、集中力を高める効果を期待できます。一方で、冷淡・消極的・孤独・憂鬱・悲しみといったマイナスイメージもあるのです。食欲を抑える効果もあるので、食べ過ぎに気を付けたい人は、青を効果的に使いましょう。

紫が持つ心理効果

紫は赤と青の両方の性質を持ち心のバランスを整えてくれる色です。潜在能力を引き出すことができる色ともいわれ、昔から宗教色としての要素も持っていました。紫には、ほかの色と比べても特に精神を集中させる作用があります。なお、高貴・神秘的・上品・高級などのプラスイメージがある一方、不満・不安定・二面性・嫉妬・下品などのマイナスイメージを与えることもある色です。疲労回復や興奮を鎮めるほかに、大人っぽい印象を与える効果を期待できます。

ピンクが持つ心理効果

ピンクは恋愛・幸せ・思いやりなどのイメージがある色です。柔らかさやかわいらしさ、愛情などのプラスイメージを持っている色でもあります。恋をしているとき、愛や幸せを欲しているときにピンクが気になる人も多いでしょう。ピンクには気持ちを和ませる、女性らしいイメージを与える、優しい気持ちにして穏やかにさせるなどの効果があります。一方、わがまま、不安定・幼稚・弱さといったマイナスイメージを与えることもあるのです。また、ピンクは味覚的な甘さを刺激するともいわれています。

白が持つ心理効果

白は最も明るい色で、暗い色を引き立て純粋、清潔なイメージを与えることができます。清潔・神聖・幸福・真実・純粋・爽やか・勝利などのプラスイメージがあるのです。緊張感を高めたり、気持ちを切り替えたりなど、すっきりしたイメージをもたらしてくれるでしょう。一方、孤独・自閉・空虚・薄情といったマイナスイメージもあります。そのため、たとえば白一色の部屋は、すっきりとした印象があるものの、どことなく冷たさを感じる人もいるかもしれません。

灰が持つ心理効果

灰はグレーゾーンなど、どっちつかずの表現で使われることが多い色です。しかし、どんな色と組み合わせても馴染んで相手を引き立てる色とも言えるでしょう。控えめ・なじみやすい・落ち着き・穏やかなどのプラスイメージと、不安・曖昧・無気力・孤独などのマイナスイメージを含む色です。目立たないような効果や、落ち着いた大人っぽさを与える効果があります。一方で、不安感を抱かせてしまうなど、マイナスの効果もあるのです。

黒が持つ心理効果

黒は格式が高い・上品・力強い・威厳・重厚・シックなどのプラスイメージがあり、使い勝手の良い色となります。知性を感じる、気持ちを引き締める、モダンな印象を与える効果も期待できるのです。しかし、不吉・恐怖・敗北・絶望・悪などのマイナスイメージが強く目立ってしまう色でもあるので、使い方に気を付けましょう。場合によっては、不安感を与えてしまい、良い効果を発揮できないこともあります。

色彩が持つ印象とデザインのイメージを合わせる

色には、さまざまなプラスイメージやマイナスイメージがあり、期待できる効果も異なります。そのため、Webサイトや商品パッケージのメインの色を何色にするかで、見る人に与える印象が大きく変わってしまうでしょう。見る人に与えたいイメージは何かを考えて、効果的な色を選ぶことが大切になります。たとえば、エネルギッシュさを連想させる赤は、人の視線を集めやすい色です。販売色や購買色といわれることもあり、見る人の購買意欲をかき立てる効果があります。

また、橙は万人受けしやすい色といわれ、親しみやすいイメージを与えるのです。食品や料理に関するデザインに使われることが多いでしょう。ほかにも、黄色はかわいらしさや明るさをイメージさせるので、子供をターゲットにしたイベントや商品に向いています。他方、緑は平和や自然をイメージしやすく、安全性やエコロジーを強調したい場合にぴったりでしょう。色によって見る人を誘導する方向が変わるので適切な色を選ぶことで、集客や購買率の上昇が期待できます。

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