2019.01.10

Windows 10 1709(Fall Creators Update)の機能と未対応の不具合情報は?

セキュリティ対策を行ううえでは、OSの定期的なアップデートは欠かせないものです。しかし、更新作業を行うことによって社内システムに悪影響が出てしまわないか心配になってしまう経営者やIT担当者の人もいるでしょう。すでに社内で導入しているWindows 10 のサポート切れや、更新用のメディアを所持していて更新を行う予定がある場合には導入時に何が起こるのかを把握しておく必要があるのです。Windows 10 1709(Fall Creators Update)で追加される機能と不具合情報を詳しく紹介します。導入時や障害発生時の参考にして、問題なく更新作業を進めましょう。

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1.Windows 10 1709の基本情報

Windows 10 1709は2017年10月17日にリリースされたものであり、それまでのバージョンと比べて新たな機能が追加されました。「Fall Creators Update」という名称が付けられており、大型アップデートに分類されています。累積更新パッケージは2018年11月28日にリリースされており、バージョン名は「OS ビルド 16299.820」です。Windows 10 1709の特徴としてあげられる点は、ストレージセンサーなどの新機能が追加された点だといえるでしょう。ストレージセンサーは空き領域を確保するためのものであり、ストレージに8GB以上の空き容量が必要になりました。また、セキュリティ機能の強化が行われており、より安全な動作環境を提供しているのです。

2.Windows 10 1709のバージョン確認方法や更新手順

普段使用しているOSがWindows 10 1709であるかは、「バージョン情報」を参照することで確認できます。バージョン情報にはOSバージョン番号とOSビルド番号が表示されているので、更新済みの場合には更新が成功していることがわかるのです。これから更新作業を行う場合には、すでに社内で稼働しているWindows 10 が更新予定のバージョンよりも低いことをチェックしてから作業を行いましょう。Windows 10 のバージョン確認の方法とISOメディアを使用した更新手順について、詳しく紹介します。

2-1.バージョンの確認方法

Windows 10 のバージョンを確認するには、まずWindowsボタンを押下して、表示されている歯車のマークを選択します。そうすると設定画面が開けるので、そこからシステムを選択して、バージョン情報へと進みましょう。Windowsの仕様内のバージョン欄に「1709」と表示されていれば、更新が済んでいる状態となります。更新がまだ完了していなければ、更新前のバージョンが表示されているのでチェックを行っておきましょう。

2-2.1709への更新に関する情報

Windows 10 のISOメディアを使用した更新手順については注意が必要です。Windows 10 1709のISOファイルの提供はすでに終了しているため気をつけておきましょう。事前にISOメディアを作成した場合を除いては更新作業が行えません。Microsoftが公開しているインストールファイルからISOを生成するといった特殊な手段もあるものの、基本的にはISOメディアによるWindows 10 へのアップデートは行えないと考えておきましょう。

2-2-1.ISOメディアを利用したメディア更新方法について

ISOメディアを利用して、Windows 10 1709へのバージョンアップを行うには、あらかじめISOメディアを生成しておく必要があるのです。作業手順としては、まずバージョンアップを行うパソコンにISOを書き込んだメディアを挿入します。そして、パソコンを再起動するとメディアから自動的にブートが行われるでしょう。もし、ブートが行われないときにはBIOSのブートメニューから、メディアが起動するように選択を行います。「Windowsのインストール」メニューで言語・時刻・キーボードを設定して、「次へ」を選択しましょう。そして、「Windowsのインストール」を選ぶとアップデートが始まります。手順通りに作業を進めて、不具合が発生しないように気をつけましょう。

2-2-2.Windows 10 1709のISOメディア作成に関して

Windows 10 1709のISOメディアは、すでに入手が難しい状況でもあります。Microsoftが公式に案内しているダウンロードサイトでは、最新バージョンのアップデート用のイメージだけを公開しているからです。Windows 10 1709のバージョンについては、ISOイメージの提供が停止しています。どうしても、本バージョンに更新したい場合には、イメージを配布しているサイトを探してISOイメージを作成する必要があるでしょう。しかし、不具合が発生してしまうリスクも生じるので、社内システムへの導入としてはおすすめできない方法です。

2-3.社内で導入する際の注意点

Windows 10 1709は公開からすでに時間が経っているものの、不具合を修正するための累積更新パッケージが多数提供されています。そのため、OS単体で大きな問題が発生してしまう可能性は低いといえるでしょう。ただ、社内で独自に運用しているミドルウェア(OSとアプリケーションを補助する機能)については、更新後に正しく作動するのか確認が必要です。仮に互換性がなく不具合が生じてしまうときには、復旧作業を行う必要があるので、更新前に元データと環境のバックアップをとっておきましょう。

また、いきなり全体的な更新作業を行うことは控えたほうが無難です。不測の事態に備えるためにも、段階的に導入を進めていきましょう。そして、更新手順・障害発生時の復旧手順・問い合わせ先などをきちんと確認してから、作業を進めていくことが大切です。作業の担当者と情報を共有しながら、一つ一つの手順を実行していき、入念にチェックするようにしましょう。

3.Windows 10 1709で追加された主な機能

Windows 10 1709では新たに追加された機能があるので、どのような特徴があるのか把握しておくことが大切です。追加された主な機能としては、「Fluent Design System」の採用やストレージセンサーがあげられます。また、MR(複合現実)対応やスマートフォンとの連携、セキュリティ機能の強化なども特徴的な点です。これらの機能を使いこなすことで、社内システムをより効率的に運用していけるので、理解を深めておきましょう。

3-1.Fluent Design

Windows 10 1709ではFluent Design System(フルーエントデザインシステム)の採用によって、シンプルな設計ながらも奥行きやオブジェクトの材質感などが向上しました。「Material Design System」が全面採用されており、スタート画面やユニバーサルアプリがアクリル調となっています。ユーザーインターフェースの変更によって、これまでとは違った操作性を体感できるのです。Fluentは「雄弁」という意味であり、統一的なデザインを構築することによって、ユーザーの利便性を向上させています。従来のデザインシステムでは、「異なるデバイスで一貫性が保てない」「階層関係が不明確」といった問題があったものの、Fluent Design Systemではそれらの問題点が解消されているのです。

3-2.ストレージセンサー

ストレージセンサーは、ディスクの空き領域を自動的に増やす機能です。ダウンロードフォルダにある不要なファイルが一定の時間経過(30日間)すると自動的に削除される機能であり、パソコンの動作環境を快適な状態に保ってくれます。また、WindowsのOS更新時に古いバージョンのファイルも自動的に削除してくれるのです。OSを使い続けていれば、一時ファイルなどの不要なデータがどんどん溜まっていくため、ディスクの空き領域を自ずと圧迫してしまいます。従来は手動でディスククリーンアップを行う必要があったものの、ストレージセンサーの機能が備わったことによって、そうした作業が不要になったのです。

ストレージセンサーの設定は、スタートメニューから行えます。Windowsの設定画面を開き、システム画面からストレージを選択しましょう。ストレージ画面にはストレージセンサーという項目があるので、機能をオンにしておけばディスクの空き容量を自動的に増やしてくれるようになります。実行のサイクルは毎日・毎週・毎月、Windowsによって決定されたときのいずれかから選べるのです。パソコンの使用環境にあわせて、適切な設定を行っておきましょう。

3-3.MR対応

Windows 10 1709ではMR(Mixed Reality)に対応しています。MRというヘッドマウントディスプレイを利用して、現実世界の映像と仮想的な映像を組み合わせる技術に対応した動作環境を提供しているのです。MicrosoftはロースペックのパソコンでもMRが使えるように、システムの動作要件を低く設定しています。そのため、ユーザーとしては手軽にMRを体験しやすくなったといえるでしょう。

3-4.スマートフォンとの連携

Windows 10 1709ではスマートフォンとの連携機能が実装されています。利用方法としては、「Windowsの設定」画面で電話欄に利用中の携帯端末を登録して、専用アプリをインストールすれば使用可能です。Android端末では「Microsoft Launcher」、iOS端末では「Continue on PC」をインストールしましょう。主な機能としては、携帯端末で閲覧しているwebページをWindows OSに送ることができます。また、Officeとの連携でWordやExcelといったファイルの編集を引き継ぐなどといったことも可能です。スマートフォンを活用できる幅が広げられるため、業務の効率化にうまくつなげていけるでしょう。

3-5.セキュリティ機能強化

Windows 10 1709では、セキュリティ機能も強化されています。許可されていないプログラムが特定のフォルダへアクセスしようとすると、自動的に検出してブロックする機能が備わっているのです。社内で使用するパソコンの台数が多いほど、ハッキング被害などに対して事前に備えておく必要があります。不正アクセスを防止する機能が付いていることは、ユーザーにとっても安心できるものでしょう。

4.Windows 10 1709の不具合

Windows 10 1709の導入を検討していても、どのような不具合が発生する可能性があるのか気になってしまうでしょう。不具合といっても、メーカー固有のものや影響が軽微であるもの、OSのクラッシュにつながってしまうものまでさまざまです。実際に不具合が起こってから慌ててしまわないためにも、導入にあたってどのような点に気をつけておくべきかを解説します。

4-1.主な不具合情報

Windows 10 1709は公開から時間が経過していることもあり、1709バージョンは比較的安定した状態にあるといえます。大きな不具合の問題はおおむね解決済みであり、未解決の不具合の例としては「.Net Frameworkで例外が発生」していることがあげられるでしょう。ただ、プログラミング言語を使ったアプリケーション開発の段階での問題であるため、開発者以外では対応ができません。.Net Frameworkを使用している開発者でSqlConnectionのインスタンス化を利用している場合は、Microsoftから提供されている回避策を利用してみましょう。「https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4470809/sqlconnection-install-throws-error-dot-net-4-6-after-recent-net-update」から、必要な回避策を検討してみることがポイントです。

4-2.解決済みの不具合情報

公開当初のWindows10 1709ではとても多くの不具合が発見されており、アップデートができなかったり、OSクラッシュが発生していたりもしました。しかし、大きな不具合はほぼ解消しているので、それほど心配をすることもありません。解決済みの主な不具合としては、「ウイルスバスター使用時のOSクラッシュ(KB4088776で解消)」があげられるものの、すでにOSクラッシュの現象は解消されています。また、「一部のデバイス接続時にブート失敗(KB4090913で解消)」といった不具合も以前はありました。INACCESSIBLE_BOOT_DEVICE でブート不可になっていたデバイスについて、ブート可能となるように修正が行われたことで問題は解決済みです。

「一部のディスプレイで表示がゆがむ(KB4058258で解消)」といった現象も見られたものの、ディスプレイとテレビに関する互換性の問題であったことが判明しています。すでに問題自体は修正され、こういった現象は解消されているのです。そして、「スリープ運用時に一部のビデオカードで描画速度が低下(KB4058258で解消)」という状況も以前は見られました。セカンダリモニタで点滅を繰り返させることで、一部のビデオカードで発生していた問題も修正しています。

5.Windows 10 1709導入時のトラブル発生時の復旧方法

Windows 10 1709は大きな不具合は修正済みであり、安定した動作が期待できます。ただ、社内で導入するシステムによっては、更新時に期待通りの動作を行えない可能性もあるでしょう。動作に不満がある場合には、復旧作業によって前のバージョンに戻すのも一つの方法です。また、データの破損についてはここで紹介する手順では対応ができないので、重要なデータは事前にバックアップをとったり、サーバーに退避させたりしておきましょう。

5-1.更新前の状態に戻すために必要なこと

Windows 10 1709に更新を行ってから前のバージョンに戻すためには、いくつかの条件をクリアしておく必要があります。復旧のための条件を満たしている場合は、更新前のバージョンに戻すことが可能です。ここでは、必要となる条件と更新方法について説明していきます。

5-1-1.Windows 10 1709に更新する前のバージョンに戻すための条件

更新前のバージョンに戻すための条件としては、まず最新のWindows 10 へのアップグレード後から10日以上が経過していないことがあげられます。そして、「windows.oldフォルダ」と「windows.~bt フォルダ」の内容がすべて保持されている点も押さえておきましょう。また、ディスククリーンアップによって、「以前のWindowsのインストールファイル」「一時Windowsインストールファイル」が削除されていないことも条件です。Windows 10 サインインにパスワードを利用していたときには、そのパスワードを把握しておく必要もあります。

さらに、アップグレード後に追加したユーザーアカウントを削除しており、ユーザーアカウント制御機能をポリシーもしくはレジストリ設定から無効にしていないことが条件です。これらの条件を満たしていない場合は、元のバージョンに戻せないので充分に注意しておきましょう。

5-1-2.Windows 10 1709に更新する前のバージョンに戻す手順

OSを更新前の状態に戻すにはWindowsボタンを押下して、歯車のマークを選択したうえで設定画面を開きます。「更新とセキュリティ」を選んで、「回復」をクリックしましょう。そして、「前のバージョンのWindows 10 に戻す」内の「開始する」を選択します。元に戻す理由が問われるので、該当する項目にチェックマークを付けましょう。更新プログラムの確認画面が表示されるので、修正パッチの適用を試してみる場合には、更新プログラムのチェックを選択します。前のバージョンに戻すときには、チェックをする必要はありません。

画面の指示に従って操作を行い、最後に「以前のビルドに戻す」を選択します。特に問題がなければ、更新前のバージョンに戻るので作業は完了です。気をつけるべき点としては、「管理者承認モードですべての管理者を実行する」のグループポリシーが無効になっているときはバージョンを戻す処理が失敗してしまうことです。復旧作業の前に、設定をきちんと確認しておきましょう。

5-2.Windows 10 1709の累積更新パッケージとは

不具合として生じている問題がMicrosoft側に認識されているときには、修正パッチで対応可能になることもあります。Windows10 1709は公開から時間が経過しているため、すでに大量の累積更新パッケージが存在しているのです。累積更新パッケージとは、修正に関する累積情報がまとまっているもののことを指します。最新の累積更新パッケージを適用することによって、それ以前の修正もまとめて行えるのが特徴です。ISOメディアを使用してOSを更新した後は、特定の理由がない限りはバックアップを取ったうえで累積更新パッケージの適用を行いましょう。「https://support.microsoft.com/ja-jp/help/4099479」から累積更新パッケージを適用することが可能であり、スタンドアローン版も公開されています。そのため、特定の時点までの累積更新パッケージを適用するといったことも可能なのです。

6.Windows 10 1709での大きな問題は解決済み 念のためのバックアップを忘れずに

Windows 10 1709では軽微なバグの修正が行われてはいるものの、大きな問題や不具合については解決済みであり、安定して稼働しているバージョンだといえるでしょう。ただ、アップデートを行ったこと問題が発生してしまったときのために、準備は入念に整えておく必要があります。これから導入するときには、念のためバックアップを忘れずにとっておくことが肝心です。また、更新済みの場合には累積更新プログラムの適用を検討してみると良いでしょう。Windows 10 1709の特徴をよく押さえたうえで、快適な作業環境を整えることが大切です。