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2020.03.27

急拡大するテレワーク!実践時における成功のポイント

- 日本HPにおける14年の歴史から、編集部が送る13の留意点まで –

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日本HP 14年の歴史から探るテレワーク成功のポイント

働き方改革の鍵として関心が高いテレワークだが、事例として目にするものの多くは、ネット企業だったり、ソフトウェア企業だったりすることが多く、日本の製造業などでは「事情が違う」と受け止められがちだ。しかし、製造業の中でもテレワークを取り入れ、定着させている企業がある。外資系企業ではあるが、日本に工場を持つ日本HPだ。製造業である同社はどうやってテレワークを定着させ、成果を上げたのだろうか。

2007年から全社員にテレワークを導入

 パソコン、プリンターなどIT機器を製造販売する日本HPのテレワークへの取り組みは一朝一夕で出来上がったものではない。その取り組みは14年前から始まっていた。

 “シリコンバレーはHPから始まった”と言われる1939年創業の同社には、「HP Way」という創業者の信念が根付いていた。そこには「人間は誰でも立派な仕事や創造的な仕事をしたいと心から望んでいる。そしてその人たちに適切な環境さえあれば、必ずそれは実現するものだ。」と書かれている。これが制度改革の原点であり、性善説に立つものだ。

 この信念に従って日本HPでは従業員に“適切な環境”を提供し続けてきた。1977年にフレックスタイムを開始し、2001年にはフリーアドレスを導入している。人事制度もそれに合わせて、自由と自己責任に基づいた内容に改正している。そして2007年では今で言うテレワークに当たる、フレックスワークプレイスを導入している。

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“HP Way”を規範として改革を続けてきた日本HPのオフィス環境

 フレックスワークプレイスの目的は大きく2つ。生産性の向上と優秀な人材の確保だ。そのために時間的拘束や身体的、精神的負担を軽減させるものとして位置付けられている。育児や介護といった特別の事情を抱えた人に限定することなく、正社員なら誰でも週4日まで利用することができる。

 もともとは週に2日だったものが、同社内でのテレワークの習慣が広がり、働き方の多様性確保と通常勤務と変わらない生産性向上の成果が得られることが分かってから、自然と週4日までに拡大されてきた。現時点で全日にしていないのは週に1日くらいは顔を合わせるべきだろう、という配慮からだ。また、育児や介護によるフル在宅勤務制度はこれとは別に用意されている。

テレワークは権利ではなく生産性向上の手段

 しかし、現在のようなテレワーク制度を導入しようとした2007年には、経営陣からは反対意見があった。「チームでの仕事の効率が下がるのでは」「サボる人がいるのでは」「勤怠管理はどうするのか」「業績が落ちるのでは」など、テレワーク導入に躊躇する企業が抱える悩みとほぼ同じだ。

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外資系IT企業である日本HPでも、テレワーク導入前にはさまざまな反対意見があった。

 その時にある役員の「すでにフリーアドレスを導入していて、同じ部署のメンバーがどこにいるか分からない。だったら社内でも社外でも同じことでは」という発言から、視点を変えて、テレワークを新しい働き方の推進力にしようと位置付けることになったという。

 ここで言う新しい働き方とは、何をやるかを明確にして、成果に基づいて評価し、部下と合意してモチベートし、遠隔から協業するスタイルを標準にすることだ。働くスペースは、仕事とタスクによって、必要な時に提供される。オフィスもそれに合わせて整備された。

 しかし、同社には製造業ならではの課題もあった。職種によっては、出勤しなければ仕事ができないため、どうしても不公平感は残る。また、一部の部門長にとっては、従来のマネジメントスタイルに関する強い思い、制度化することに対する漠然とした不安から導入に否定的な意見も根強くあった。この問題に対して同社がとった対応は、全社一律ではなく、部署ごとに導入できる柔軟性を確保することだった。「テレワークの目的はあくまで生産性の向上。働く人の権利ではなく、部門の判断に委ねる」とされたのである。

 テレワークを活用したい部署から始まったテレワークは、やがて全社に広がっていった。コミュニケーションの頻度が落ちることはなく、業績も維持されることが明白になっていったからだ。今では完全に全社にテレワークという働き方が定着している。

どういう順番で取り組むかが成否を分ける

 テレワークが大きく推進された背景には3つの事象が上げられる。東日本大震災への対応でテレワークを余儀なくされたこと。これによってテレワークでも生産性が落ちないことが証明された。さらにワークライフバランスや効率化にも貢献するという働き方の側面も大きい。そして3つ目がテクノロジーの発達だ。

 特にテクノロジーの発達がテレワークの定着を後押しした。社外の通信環境が充実され、デバイスのセキュリティも向上した。さらにツールの利便性も大幅に向上した。ワンタッチでWeb会議が設定できて、ペーパーレスで資料も共有できるようになった。

 クラウドへのシフトという部分も大きかった。アプリケーションをクラウド上で活用するようになったことで、社外でも社内でもボーダレスで仕事ができる環境が整った。人事アプリケーションも社外から利用できるようになり人事管理面での課題も解消された。

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 同社の事例には、一般企業がこれからテレワークを進める上で参考になるところは多い。何よりもポイントになるのは、どういう順番でテレワークに取り組むかだ。同社ではテレワークを導入する前に、フリーアドレスを導入していた。部下が自分のデスク前の島にいない状況に慣れていたことが大きい。

 フリーアドレスを導入していれば、テレワークへ移行するための心理的な障壁は低くなる。まずフリーアドレスを導入し、次に社外でも仕事ができるようにIT環境を整え、成果管理型の人事制度にシフトして、進めやすい部署から進めて横展開を図る。こうしたステップを踏むことで、確実にテレワークを定着させ、成果を上げることができるのではないだろうか。

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テレワーク実践時における13の留意点

さて、Tech & Device TV Powered by HPでは、日本HPへのインタビューやテレワーク導入におけるこれまでの取材の中から、現在の日本企業におけるテレワーク推進時のポイントをTIPSという形でまとめてみた。テレワークが新しい仕事のスタイルとしてこの日本でも定着していくことを心より願っている。

テレワーク時もこれまでの習慣と変わらないように

 まず、最初の3つはテレワークだからといって構えることなく、これまでと同じような習慣を踏襲しようというものである。

1.会議の開始時にはオフラインの会議と同じように挨拶や雑談をして場を和ませる

 オフラインの会議で、いきなり議論が始まることはありません。最初の数分は挨拶をしたり、近況を聞いたりするはず。テレワークの会議でも意識して同じように始めることが、会議をうまく進行させる第一歩である。会議の前の“ざわざわ感”が気持ちを引き締め、活発な意見交換を促すことから、特に主催者は「お元気ですか?」「今日はどこから入っていますか?」「顔色良いみたいですね?」といった気軽なトークで会議の参加メンバーに語りかけて、建設的な意見が出やすい和んだ場を作るように心がけよう。

2.オフラインの会議と同じように会議の前にアジェンダ出し、会議主催者は議事録を出す

 テレワークの会議の良いところは、ツールがあれば手軽に設定できること。参加メンバーにメールで案内を出しておいて、時間が来たらWeb会議システムを立ち上げれば、すぐにスタート可能である。ただ手軽にセットできるからといっても会議は参加者たちの時間を奪う貴重な場であることに変わりはない。主催者はちゃんとアジェンダを用意して、会議が終わったら議事録を作成して、参加メンバーと共有しよう。また、参加メンバーは事前にアジェンダに目を通して、自分の考えを整理しておくことが望ましい。通常の会議同様、効率よく円滑に会議を進めることは主催者の役割であることに変わりはない。

3.1日の仕事はあらかじめ計画したうえでとりかかる

 在宅やカフェなど働き場所が自由になることで気分も自由になりやすいがそもそも休日ではない。仕事の合間にプライベートの予定も入れることも含めて1日のスケジュールを事前に組み立てたうえで、その日を始めたい。また、スケジュールをきちんと周りに公開することも忘れずに。これもまたテレワークになっても通常と同じスタイルを踏襲すべきことである。

テレワーク環境に最適化させるオンライン会議

 次は、これまでとは少し違う環境だからこそ、質の高いテレワーク実践に向けて最適化させるべきポイントを、まずはオンライン会議についていくつか挙げてみた。

4.カメラ機能をきちんと使い、顔を出して表情をできるだけ伝える、このことで緊張感も出る

 オンライン会議に参加するメンバーは、できる限りカメラを使って顔出しをすべき。慣れるまでは少々恥ずかしいものだが、画面に参加者側の顔と周りを映し出すことで、自然に相手に今の状況が伝わりどんな環境にいるのかも分かることは主催者側のメリットである。、また自分自身も緊張感を持って会議に臨むことができる。リラックスした気分で参加することと緊張感のない状態で参加することは違う。やはりあくまでも仕事モードでオンライン会議参加することは他参加者へのマナーであろう。パジャマのまま、ベットの中から参加というような事態は避けるべき。そのためにWebカメラという便利な機能を正しく使い、オンライン会議に最適化させた状況をつくりたい。

5.意見は論理的に簡潔に、しっかり考えて発言、他の人の発言時には邪魔しないよう留意する

 テレワークの会議ではどうしても声でのやりとりが中心になります。だからこそお互いにマナーを守ることが大切です。自分が発言するときには、考えをまとめておいて、論理的かつ簡潔に話すように心がけましょう。だらだら話していると迷惑なだけでなく、他のメンバーの集中力が低下して、成果の上がらない会議になってしまいます。他のメンバーが発言しているときに割り込むのものマナー違反。周りに人がいないことで分かりにくい雰囲気もマナー次第で心地よいものとなり得ることを忘れずに。

6.会議主催者は、開始時にあえて参加者みんなに声をかけ、参加しやすい状況をつくる

 いつも一緒に仕事をしているメンバーばかりの会議は別にして、テレワークの会議では相手との距離を遠くに感じやすく、議論に入って来づらい人もいるはず。会議の主催者として、あえて最初に参加メンバー全員に声をかけてみるのも、円滑に議論を進めるためのコツの一つ。最初の声がけ一つで気分が和らぎ、マイクを通して会話することは、音声機能が正しく働いているかをチェックすることにもなる。メンバーにとっては発言するための肩慣らしにもなるのでぜひ実践してみてほしい。

7.みんなが同じ環境ではないため、参加者の参加状況を配慮しながら進行する、また参加者もマイクのON/OFFには気を遣う

 参加メンバーの中には、カフェから参加する人やスマートフォンで参加する人もいるかもしれない。進行にあたっては全員が同じ環境ではないことを配慮して、発言しやすい状況をつくってあげることも大切。また、同じ会議室に複数の参加メンバーがいるときなどは、マイクがハウリングして聞き取りづらくなることもある。自分が発言していないときにはこまめにマイクをOFFにしたりする気遣いは必須である。カフェから参加する人などは、ノイズキャンセル機能などを使うことで周囲の雑音を遮断したい。

8.あえて10-15分くらいの雑談の場をつくるのもよい、特にマネージャーは自ら積極的に設定する

 オフラインの会議では、会議室の近くのコーヒーマシンの前とか、会議室の前の廊下とかで立ち話をしている風景が見受けられるが、そうした緩い会話も人間関係構築のみならず、現代ではアイデアの創出という観点からも重要とされている。。でも、テレワークではやはりそういった場面をつくりにくい。。だからこそ、意識的に会議の最初に雑談の時間を設けることに加え、あえてマネージャーは積極的に10-15分だけの雑談タイムを設定しオンラインでやってみるのも場づくりの一つの手である。

9.チャットやテキストメッセージでは絵文字などを使い、なるべく感情表現を行う

 テレワークの会議ではチャットを併用して進めることもあります。そんなときには意識的に絵文字を使うのがお勧め。絵文字を使うのは恥ずかしいという方も多いと思うが、テキストでは伝わらない感情を伝えるのに、絵文字は大変便利である。。また若い世代の人はプライベートでも使い慣れていることでテキストのみでの表現に比べて気持ちを伝えるやり方として慣れている。仕事でも自分の気持ちを伝えるのに、積極的に使ってみてはどうだろうか。特にポジティブな感情表現に使うと、文章だと躊躇してしまうことも素直に気持ちを伝えることができて、相手にも喜ばれことが多くなるはず。

10.会議室から複数人で参加の場合も、あえて一人一人が自分のPCで参加し、音声は電話や360度マイクなどを使い、一つに統合する

 会議ではそれぞれが対等の立場で発言することは、成果を上げるポイントの一つ。それはテレワークでも同じである。一人でオフィス外から参加するメンバーに対して、複数のメンバーが会議室から参加する場合に注意したいのが、相手に疎外感を与えないように、1対Nの関係を作らないこと。会議室にいるメンバーもできるだけ一人一人がPCを用意して参加しよう。音声についてはハウリングしないように発言のたびにマイクのON/OFFを切り替えたり、音声だけは一つの電話を使ったり、最近のPCに搭載されている360度マイクを使うなどの工夫をすることで、外から参加しているメンバーにアウェー感を与えるような状況は避けよう。

テレワーク実践を機に新しい習慣をつくる

ここまでは通常と変わらないようにするところとオンライン会議に対する最適化についてまとめてきたが、最後にこれを機にぜひ考えてみてもよいと思われることをTech & Device TV Powered by HP 編集部からの推薦ということでまとめてみた。

11.これまでルーティンにあった通勤に代わるものをつくる、必ず顔を洗い、コーヒーを淹れる、などなんでもよい、仕事の終了も同じ

 テレワークを実践していくことのメリットの大きな部分に毎日の通勤がなくなることがある。満員でつらい通勤電車に乗らずに済むことは、精神的にも時間的にも肉体的にも良いことであることは万人に共通のことである。ただ、そこでつくれていた仕事に挑むリズムがなくなってしまうことには留意したい。。個人ごとに通勤に代わるルーティンをつくって、自分でON/OFFを管理することは個人に課せられた課題である。仕事を始める前に顔を洗い、着替え、コーヒーを入れる、机やテーブルを整理し同僚にWebカメラで挨拶する、家族と朝ごはんを食べスマートスピーカーに話しかけるなど、何でもよい。また、仕事の終わり方も同様。自分にあったテレワークの日のルーティンづくりをぜひ考えてみてはどうだろうか。

12.身体を動かす習慣を新しくつくってみる、激しい運動ではなく、朝や夕方の軽い散歩程度のもの

 通勤はストレスを生むことも多いが、実は日々の運動にもなっている側面もある。それがテレワークではなくなり、。そのままでは運動不足を招き気がついたら体重がどっと増えた、ということになりがち。ソーシャルメディアでも最近体重増で嘆いている投稿をよく見かけるようになったここはぜひあえて運動する時間を設けたい。スポーツジムに加入するのもよいが、必ずしも激しい運動やトレーニングをする必要はない。朝や夕方にちょっと散歩するなどの軽い運動でもよいので、運動不足が解消されるだけでなく、ON/OFFの切り替えスイッチにもなるような運動を意識して行ってみることをお勧めする。

13.同居している家族との会話はできるだけ増やし、食事時間は計画的に決め、優先する

 せっかく自宅で仕事ができるということで同居している家族との会話の時間を増やすことはこれまでのオフィス勤務時代ではなかなかできなかったこと。夫婦ともにテレワークの場合や、夫は在宅、妻はオフィス勤務など、それぞれの家庭によってさまざまな状況の変化が生まれていることは想像に難しくない。こういう変化の時だからこそ家族との会話をぜひ多くとってこれからのスタイルを模索してみてほしい。また、可能な状況であれば食事の時間を決めて家族と会話しながら食事することも大切にしたい。、また気をつけたいのが、仕事しているときに話しかけられたり、家の用事を頼まれたりして、仕事に集中できなくなる状況も避けたいということ。テレワークは休日ではなく、あくまでも勤務形態の変化であるからこそ、家族とも会話してみんなが理解しあいながら新しい文化をつくっていくことにトライしたいところである。