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2019.07.08

AIプロジェクトを加速させるエッジコンピューティングの実際
~AI実装の迅速化と効率化を担うHPの AI戦略~(2/2)

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学術研究からビジネス実装へと発展しているAI。ネットワークカメラや各種センサーなどから得られるデータ量は増え続け、いかに効率的かつ安全にデータ処理を行うかという課題に直面しています。また、膨大なデータからAIに必要な学習をしていくための前処理に多くの労力がかかってしまうという別の課題もあります。これらの問題の解決策として、日本HPは、2019年6月13日にセミナーを開催。コストパフォーマンスの高いエッジコンピューティングとその活用事例が紹介されました。

データサイエンスにおいて有効となるGPU コンピューティングの活用法とは

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エヌビディア合同会社 ソリューション アーキテクチャ&エンジニアリング
シニア ソリューションアーキテクト
佐々木邦暢 氏

NVIDIAのデータサイエンス事例として佐々木氏は、オンライン自動車販売サービス事業者が、投稿される自動車の写真を手作業からAIに変えたことで劇的に工数を削減した例や、NVIDIA GPUの搭載により、どの商品が入れられたかを認識できるショッピングカート、動画を分析してどんな状態かといった、シーンの検索を簡単にするサービス、画像認識で農作物と雑草を分類して必要最小限の除草剤を散布し、除草剤を 90% 削減する農業機械などを挙げました。

佐々木氏は、解析や処理が必要なデータはどんどん増えてきており、それに対応するべくNVIDIAのグラフィックカードも大きく進化しているといいます。最新のTURING世代のグラフィックカードの最上位機種ではGPU側のメモリを最大48GBも搭載可能で、GPUにはデータサイエンスの計算を行う「TENSORコア」と、レイトレーシングでのビジュアライズを行う「RTコア」も追加されています。佐々木氏は「Tensorコアを使っていただくことですごく速くなります。AI のパフォーマンスを計測するベンチマークテスト『MLPref』でも、混合精度演算7部門中6部門で首位を獲得するなど好成績を得ることができました。Tensorコアの演算は自動適用で、ほぼコーディングなしで利用可能となっています」と説明しました。

続いて佐々木氏は、GPUでのデータサイエンスに適したオープンソースライブラリ「RAPIDS」について説明しました。「RAPIDSはGPUメモリをメインに使って、GPU中心で処理を行います。並列性の高い処理なら劇的な効果が得られます」とし、CPUだと57.1秒だったものが、GPUなら4.3秒でできた分析処理事例など、劇的な効果を示しました。

そしてNVIDIAでは、GPUコンピューティングの導入をサポートするべく、NGCと呼ばれる、GPU対応のソフトウェアハブを提供しています。佐々木氏は最後に「GPUコンピューティングに最適化されたコンテナイメージが用意され、定期的にアップデートされることで同じハードウェアでも性能を上げられます。業界特化型のソリューションも提供していますし、ユーザーガイドの用意もあるのでぜひ始めていただきたいです」とNGCの活用をお勧めしました。

人手不足解消のための効率化や、AIを使用した無人チェックアウトの店舗の可能性

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株式会社ヴィンクス 営業本部 プロダクト企画部
能登一樹 氏

ヴィンクスは、小売業向けのソリューションを提供する企業。小売業では、POSや発注、ポイントカード、ECなど、言語も仕組みも異なるシステムを複数使っている場合が多く、同社では〝マイクロサービスアーキテクチャ〟と呼ばれる、クラウド・ネイティブ時代の新しいシステムのアーキテクチャを採用したシステムを提供しています。

そんな能登氏が挑戦したのが、Amazon GOのようなウォークスルー型無人店舗のシステムの構築。顧客が入店し、商品を手にとって、決済を済ませるまでの一連の買い物の流れを無人店舗で実現していくというもので、顧客(誰が)と商品(何を)を特定していくことが鍵になります。さまざまな可能性を検証した結果、顧客の特定には、物体検出とスマートフォンのBluetooth通信で行い、商品については棚に距離センサーをつけることで実装したといいます。

物体検出のため、高速で画像を撮影して分析する必要があります。物体の画像を検出し、前後の画像から特定した顧客がどう動いたかを検出していきます。たとえば秒間30コマで得られた画像の分析をクラウドで処理をするとなると、ネットワークやクラウドのリソースやコストも甚大になり、現実的ではありません。

そこで能登氏はエッジコンピューティングを選択。画像の処理はエッジでおこない、クラウド側には画像日付や利用者IDのログデータのみを送る構成です。「これならクラウドのリソースも気になりません。リアルタイム認識のための処理は、エッジ側のコンピューターの性能が求められますが、今回はNVIDIAのQUADRO RTX5000を搭載したHP Z4 G4 Workstationで構築しました。複数台のカメラを接続しても問題なく動作し、熱暴走もありません」と能登氏は語りました。

この仕組みは、80ものマイクロサービスを組み合わせて実現しており、店舗側に、スマホのWebアプリから商品をスキャンして決済したり、遠隔地からバーチャル店員が接客対応したりするなど、柔軟な機能の拡張が可能といいます。能登氏は最後に「新しいシステムが登場するとそこで働く人の働き方が変わり、新しい仕組みが求められます。新しいことを行う際に信頼できるメーカーがHPさんです。HPさんは常に挑戦し続けています。我々もこの先の未来のために新しい挑戦をしていきましょう」と呼びかけました。

学習済みAIモデル提供により、小売・銀行・鉄道・医療などで活用が進んでいるOPTiM AI Cameraの事例

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株式会社オプティム プラットフォーム事業本部 執行役員
山本大祐 氏

オプティムは発電施設や送電線の確認、都市開発などにAIによる画像解析を活用。危険エリアへの侵入検出やインフラ設備の点検などを行なっています。また、佐賀大学の本庄キャンパス内には、無人店舗である「モノタロウ AIストア」を展開しています。山本氏は「無人店舗だと万引きが心配だというお話を聞きますが、一般的なロス率を大幅に下回る形で営業ができている」と実績を説明しました。

このほか、銀行に設置されたATMの監視の一貫で、振り込め詐欺被害を食い止めるため、電話をしながらATM操作をしている人を検知して銀行や警察と連携するシステムや、鉄道のプラットフォームの危険行動を監視する取り組み、ドローンで撮影した画像によってピンポイントに農薬を散布して減農薬野菜を作る事業や、佐賀大学医学部と共同設立されたメディカルイノベーション研究所で眼底・レントゲン写真の画像診断支援も行うなど、さまざまな分野にAIサービスを提供しています。

山本氏は「AI学習モデルをパッケージ化した画像解析サービス OPTiM AI Cameraをリリースしました。11の業種に向けたもので、非常に好調です。カメラを使って出入り口を計測すると来店者数から来店者予測ができます。同じカメラで検知場所を店の外にすると、往来の人数をカウントし、店舗前の歩行者数予測ができ、入店者の数字と組み合わせると入店率もわかります。このように、ひとつのカメラに複数の役割を持たせることができます」と説明しました。OPTiM AI Cameraは、エッジ端末45万円~(HP製のワークステーションをベースにしたモデルもあり)を導入のうえ、カメラ1台あたり月額15,000円から利用可能となっています。

山本氏は、数々のAIプロジェクトにかかわってきた経験をもとに、2019年3月に書籍「課題解決とサービス実装のためのAIプロジェクト実践読本」を出版しています。最後に山本氏は「AIプロジェクトのプランニング、実証、製品開発、導入運用のパターン化ができてきたので、それを本にしました。ディープラーニングのプログラムの体験も含め、AIプロジェクトの進め方を短期間で習得できるツールです」とアピールしました。

医療のAI研究や医療機器へのAI導入を促進する
Healthcare AI Workstation

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菱洋エレクトロ株式会社 ソリューション事業本部 副事業本部長
青木良行 氏

青木氏が所属するソリューション事業本部では、半導体から、センサー、データベース、HP製品やNVIDIA製品、Microsoft Azureなど、エッジからクラウドまで取り扱っています。NVIDIA製品では、医療専任グループを設置し、より専門的な知識でソリューションを提供しているといいます。

「医用でのNVIDIA製品の用途は、GPUコンピューティングによるCTやMRIなどの検査装置の3D再構成や、X線診断装置などでのリアルタイム画像処理に加え、AIが展開されます。画像が高精細になっており、GPUならコア数が多いのでいっぺんに並列処理ができます。FPGA(構成を設定できる集積回路)という選択肢もありますが、これに比べて手間暇を少なくできるという利点もあります」と青木氏は解説しました。

GPUコンピューティングのAI活用には「NVIDIA Clara SDK」が提供されています。これは、学習済みモデルと転移学習を組み合わせることで、ゼロからの大規模なデータの収集、ラベル付け、モデルのトレーニングにかかる多額のコストを削減、放射線科医がディープラーニングのワークフローにすばやく取り掛かれるようになるものです。

青木氏は「画像を取り込んでアノテーションし、部位や症例に合わせたものを学習し推論を出すという処理において、アノテーションは時間がかかるものですが、Clara SDK のAI 支援アノテーションを使うことで、これまでの最大10分の1くらいの手間でできるようになっています」と説明しました。

菱洋エレクトロでは、今後、日本HP、NVIDIA社の代理店として、 HP Z WorkstationにNVIDIA Clara Train SDKを構築してご提供する予定。 NGC(NVIDIA NGC-Ready System)のハードウェアにて、NVIDIA Clara SDKを プリインストールして提供し、操作のトレーニングやサポートパートナー、受託開発パートナーの紹介など、さまざまな支援サービスを提供するとしています。

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