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Interview

高校生たちが
編み出した、
令和時代の
AIモーツァルトの旋律

クラシック音楽の世界を代表する一人である、アマデウス・モーツァルト。一時期はフリーランスクリエイターとして活動していた音楽家であり、自らが求め編み出した曲と、クライアントに依頼され時代に合わせて作った曲の両方を手がけていたと言われています。

そんなモーツァルトが現代に生きていたとしたら。いったい彼はどんな世界を私たちにみせてくれるのでしょうか。

過去に前例のないプロジェクト「Project Z - 最新テクノロジーとともに挑む表現と創造への挑戦」に取り組んだのが、音楽好きの18人の高校生たちと3人のプロクリエイター。高校生たちは4つのグループにわかれてAIを駆使してモーツァルトの楽曲の旋律をディープラーニング。そこから生み出された新たな旋律にストーリーをもたせながら、AIを駆使しモーツァルトの新曲開発にチャレンジしました。

グループの1つ、「ビタミンC」に集ったのが中澤太良さん、村田有生喜さん、森彩花さん。本プロジェクトにおける彼らの経験を取材しました。

ノイズが増えないように転調した
主旋律のみをAIに覚えさせる

プロジェクトの最初に、モーツァルト協奏曲のMIDIデータ収集からはじめたビタミンC。そこからメロディラインのみを抽出し、曲間で転調した部分はその場所の小節で切り分けて、すべての旋律をピアノソナタ第13番と同じ変ロ長調に転調させたうえで80ほどのトレーニングデータを作成しました。

森:今回のAIはモーツァルトの曲をたくさん勉強させることで、次の音がどうなるのかを予測してモーツァルトが作りそうな曲を生成するようになっているため、調を揃えないとぐちゃぐちゃになるなということを最初に話し合ったんです。そして80曲くらいのトレーニングデータを作ってディープラーニングさせました。

曲全体ではなく、またメロディライン全体でもなく、彼らがモーツァルトらしいと思えた部分に絞って勉強させた結果、生まれたフレーズは難解なものだったようです。

中澤:AIについて調べたことはあったんですけど、実際に自分の手で使ってみたのははじめての経験でした。自分の想像通りには動かなくて、モーツァルトの曲を生成するために作ったはずのAIでも思い通りに動かすのはかなり困難でした。このことでAIはまだ発展途上ということがわかりましたね。

最初は音楽性に欠けた、謎めいた旋律ばかり出てきたのでしょう。「質の高いフレーズを音楽家たちに提案する」ことを目標として掲げたビタミンCは、AIのパラメーターを細かく変更しながらのチャレンジを続けていきます。

森:GoogleのGoogle Colaboratoryを使って、PythonでGPUをコントロールしながらディープラーニングさせたのですが、それが難しくて。AIって全部簡単にやってくれるものだと思っていたんですけど、パラメーターを調節するなど人間がたくさん手をかけなければならないということがあるのだと感じました。

村田:今回のプロジェクトに参加してAIの種類がたくさんあること、人間があらかじめルールを作ってから運用することなど、いろいろと勉強になりました。AIが社会に台頭してくる時代を生きる私たち世代だからこそ、いい経験になりました。

ビタミンC以外のグループの発言を聞いても、どこもAIのチューニングには苦労した様子。そこでプロクリエイターチームおよびProject Zを支えた日本HPチームは、ビタミンCの生成した楽曲を中心にしながらも、別チームが作り出した旋律も活かし、細かく分けて再構成することで全体のメロディラインを作ることとしました。

ある意味、破天荒な曲の作りかたとなるのでしょう。しかし高校生たちからメロディラインを受け取り、伴奏パートを作り、最終的に全方位から音が飛び込んでくるハイレゾイマーシブオーディオに仕上げた作曲家の江夏正晃さんは、「ダイヤモンドの原石でした」と言います。

江夏:感動を数値化できていない現代において、AIはまだ感動を作れません。実際に今回のAIが作ったフレーズは音の羅列にすぎないところがありましたが、一部のメロディは確かにモーツァルトなんです。リズムも、音の展開も、僕ではいっさい想像もつかないものでした。僕では作りえないものだったんです。だからメロディは高校生から送られてきたMIDIデータの旋律を使いました。これが実に印象的なフレーズでして。シンガーに歌ってもらったら、何度やっても歌えないんですよ。でも何か引っかかるところがある。そこで違和感からくる繰り返しの気持ちよさが出るように、伴奏をつけていきました。

現代のモーツァルトは18世紀の
トレンドにこだわらないのでは

既存の音楽理論には当てはまらないような、未知の音楽。しかし、彼らが作成したAIモーツァルトの新曲「Ten Million Nights」を聞くと、そこはかとなく18世紀のモーツァルトの雰囲気が漂っているじゃないですか!

江夏:気持ちのいい展開にしようとすればいくらでもいじれます。でも今回、僕の個性はできるだけ存在を薄め、高校生たちとAIモーツァルトが作り出した旋律を磨くことに注力しました。だから旧来のクラシックでまとめるのではなく、現代的なコード進行で繰り返しを活かしたメロディラインとしたのです。

ピアノ(クラビーア)やオルガン、バイオリンと、複数の楽器をマスターしていたモーツァルト。彼がもし現代に生きていたとして、数多の自作電子・電気楽器が古代や中世とはまた異なる独自の音律で音像を描いているのを知り、日本を含む五音音階のカルチャーに触れたとき、純正律や平均律とは異なるスケールにチャレンジするのかも。そう考えると「Ten Million Nights」のフレーズに深みを感じてきます。時に不安感のある音運びが、軽快さのなかに悲しみをのせてくるモーツァルトらしい気がしてきました。

村田:私は普段モーツァルトをあまり聴いていないから、モーツァルトっぽいかどうかはわからないんですけど、自分たちが モーツァルトの旋律を元に作ったMIDIを、現代的に仕上げてくれたのは純粋に嬉しかったし、もしモーツァルトが生きていたら現代曲をこう作るのかなと思ったら...私は好きです。

中澤:AIが生成したデータはモーツァルトらしさがあったのですが、完成品は僕の知っている、僕の中のモーツァルト像と乖離していて少し驚くとともに、クリエイターのみなさんの感性によって現代的な作品に近づけてくれたのかなと思ったんです。だからクリエイターの方々と、僕たち高校生の集大成なのかなと思いました。

2019年、AIの世界を
肌で知って感じたこと

みなさん、3人とも高校3年生。いままでよりシャープに、人生設計を見据えた進学という道を模索する段階です。このProject Zでは、今までの授業では学ばなかった新しい経験をたくさん身に宿したことでしょう。今回の経験が今後の人生においてどう活きると思うかを尋ねてみました。

中澤:これからAIがいろんな方面に進出していくと思うんですよ。今のところ僕は技術系に進む予定はないんですけど、それでも、どの分野にいこうと、いつかはAIと向き合わなければいけないときがくると思うんです。だからいまこの時期にAIがどこまでできるかを知ることができたのは大きな財産になっていくと思います。数値化すれば、データ化すれば何でもできるんじゃないか、とも感じるようになりましたし。

村田:私は今回Project Zに参加して、まずチームワークを学べた気がしています。ビタミンCは私がリーダーだったんですけど、みんないろんな発想をしてくれるし、それをどうやってまとめて作業していくとか、知らないことをたくさん吸収できました。そして将来はテクノロジーに関係した職に付きたいと思ったんですよ。クリエイターの皆さんといろんな話をしたり、制作現場にいっていろんなものを見せてもらいましたし、今後の自分がなにかを作るかというところで、今後の経験を活かせていけたらと思いました。

森:いままで音楽とテクノロジーは真逆のものだと思っていて、それが今回融合したというのが興味深く感じました。父に小学生の頃から就職のために資格をとれということを言われていました。でもAIが進化していくにつれて、資格を持って就職しても、AIがその仕事を奪っていく未来もそう遠くないんだなと感じたんですね。今回の経験が将来どう役立つか、自分にどう関わってくるかはまだわからないんですけど、面白かったです。

音楽家の江夏さん曰く、「現状AIはまだまだ中学二年生」。つまり、少しできるようになって世界を制覇するくらいの生意気さはあるけど、実際は親がきめ細かくケアをしていかなければ望んだとおりの結果を出すのが難しい段階です。そんな未熟ながら可能性に満ちたAIと共にプロジェクトを成功させたからこそ、今回参加された高校生たちは、今後やってくるであろう成熟したAIに馴染み、AI社会の中心に立つ人物となっていくのでしょう。日本と世界の未来を背負うリーダーとして羽ばたいていける可能性を強く感じたインタビューでした。

Interview

  • 最高峰のテクノロジーが紡いだ
    最先端のクリエイティブ

プロジェクトを支えた
ワークステーション

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