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2019.07.04

Ledge.ai

キヤノンの群衆人数カウント、6,000人もの人数を瞬時に推定。AI技術をマーケティングやセキュリティに

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2019年にはラグビーワールドカップ2019日本大会、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが日本で開催される。国内外から注目の集まるこれらイベントでは、外国人観光客が大量に来日することが予想され、公共交通機関やイベント会場、市街地などでも相当な混乱があるだろう。

そんななか、日本が誇るカメラメーカー、キヤノンはネットワークカメラの映像をAIで解析し、群衆の人数を推定する技術を開発した。昨年6月に行った実証実験では、高解像度カメラと組み合わせ、約6,000人あまりの群衆をカウントしたという。混雑状況をリアルタイムに把握できるため、混雑緩和や警備強化はもちろんのこと、マーケティングにまで活かせるというその技術について、キヤノン株式会社の石田真一氏と二木徹氏に取材した。

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石田真一(左)
キヤノン株式会社
イメージソリューション事業本部
NVS事業推進センター
部長
 
二木徹(右)
キヤノン株式会社
イメージソリューション事業本部
NVS開発センター
部長

群衆の人数を迅速にカウントし、混雑状況をリアルタイムに把握

従来の人物をカウントする技術で群衆を解析すると、人の顔を検知できないことや、人と重なるなどして体の一部が隠れると認識できないことがあった。人数を正確に数えるという機能面で、十分とは言い難い。

今回キヤノンが開発した群衆人数を推定する技術では、じつに緻密に人数のカウントを実現している。

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昨年10月に日産スタジアムで行われた実証実験では、じつに1000人近くの群衆を、数秒で正確に検知しカウントしている。任意に区切られた各領域内の人数や、時間経過による人数推移を把握でき、混雑状況の分析に役立てる。この技術では、AIを用いて人の頭部を正確に検出しており、群衆の人数を高精度にカウントする。

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上図の例は、屋内および屋外にある売店前の人数推移グラフである。このように時間帯別に人数推移をグラフ化することで、人々が購買行動に出やすい時間帯はいつなのか、一目で把握できる。売店前の混雑状況に応じたスタッフの人数配置や営業時間の設定など、マーケティングや円滑なイベント運営に寄与できる。

ディープラーニングで群衆の人数を推定。導入のハードルは?

── 群集人数カウントの導入ハードルは高いのでしょうか?

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── 二木
「特別なセンサーなどの設置は不要で、一般的なネットワークカメラと、このソフトウエアを組み合わせることで導入できます。

この技術は、ディープラーニングを軽量化することにより、GPUを使用せずに、一般的なPCのCPUだけでも実用的な処理速度を実現したところに特長があります」

ネットワークカメラと群衆人数カウントの技術さえ揃えば、導入ハードルは非常に低い

── 群衆人数カウントのAI技術の精度はどのくらいでしょうか?

── 二木
「前述の実証実験で精度を検証した結果、誤差±5%くらいでした。

誤差の要因としては、傘や帽子などの被りものをしている人はカウントしづらいということがあります。ほかにも、光や影の映り具合などが精度に影響します。実際よりも多くの人数をカウントしてしまうパターンは人間の目と同じで、人の頭部に似た木や柱など、そういうものを間違えて検知することもあります」

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── 石田
「実証実験での誤差±5%の精度があれば、人数を数える用途に十分実用可能です。この技術の引き合いで多いのは、セキュリティやマーケティングへの活用です。

セキュリティでは、リアルタイムに人数を把握して警備員の配置を柔軟に変更したり、近くにいる警備員が即座にお客様を誘導したりすることで、混雑緩和に貢献します。

マーケティングでは、店舗前の領域をカウント対象に設定して、ピーク人数や時間帯を店舗ごとに把握し、従業員のシフト検討などに活用できます。

これらの用途は、おおよその人数が把握できれば、十分に実用性があると考えています」

AI技術は精度をどのように向上できるかが議論になりがちだが、目的によって必要な精度は異なる。このようにユーザーが求める精度を達成すれば、ビジネス的価値は生まれる

セキュリティやマーケティングにも。事例から見る群衆人数カウントの活用範囲

── どのような活用事例がありますか?

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── 石田
「人が密集する駅や空港、イベント会場、市街地などへの活用が考えられます。

混雑状況を把握して、事故を未然に防ぐ目的で使われることから、警察関係者や警備会社系のお客様からのお問い合わせが多いですね。

マーケティング観点では市街地のまちづくりをサポートしたり、施設の誘致を支援したりするために群衆のデータを利用できます。マーケティングへの活用価値は高いので、これからさらに活用の可能性は広がっていくと思います」

特に日本の都市部は人口が密集しており、AIを用いた群衆人数カウントは日本社会に大きく貢献する技術だろう。

さらに注目したいのは、これらの処理がリアルタイムに行えることである。数千人規模の混雑をリアルタイムにカウントできる。人数が一定の基準を超えたらアラートを発報するなどの設定も可能だ。国際的なスポーツイベントでも危惧される会場周辺の警備をより強固なものにしてくれるだろう。

次にマーケティング活用にも注目したい。これまでPOSデータなどでは、購入者のデータしか取得できなかった。群衆人数カウントを使えば、購入に至らなかった人も含め、実際に訪れた人数を時間帯別に把握可能だ。人数推移を分析することで、キャンペーンの開始や、人員強化などを適切な時間に行い、販売効率の最適化に貢献できる。

キヤノンの今後の可能性。
AIを用いて社会課題解決に取り組む

── 今後の展望は?

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── 石田
「キヤノンは、あらゆる現場で得られる映像に付加価値を与え、社会のさまざまな課題を解決することを目指しています。

今回の群衆人数カウントのほかにも、サポートが必要な人を早期発見する白杖・車いす検知の技術や、病室などに一人でいる際の転倒を検知する技術など、AIを用いてさまざまな技術を開発中です」

群衆の人数をカウントする技術も、カメラ越しの問題を検知する技術も、それぞれ何かしらの社会課題に対してソリューションを提供している。映像に付加価値を与えるというキヤノンの取り組みは、今まで映像には残っていたものの見過ごされてきた社会課題に対してうまくアプローチできるはずだ。

── 石田
「安心・安全の実現はもちろんのこと、人手不足などの社会変化に対しても、利便性や快適性の向上、業務の効率化に役立つソリューションを提供し、キヤノンのソリューションで世の中に貢献していきます」

Ledge.ai(制作:Ledge.ai 執筆:田村 宣太)