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2019.07.11

Ledge.ai

【Sansan】ビジネス上のつながりから“優秀な営業”を定量化して、その正体を暴く

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昔も今も変わらず、ビジネスの現場でかかせないのは「名刺」です。しかし、その管理方法はというと、個別に保管されていたり、そもそも管理されていなかったりします。

そこで、交換しただけでそのままになっている名刺をデータベース化することで、ビジネスに活用できないかと目を付けたのがSansan株式会社です。

  • ・営業先のキーマンが誰なのか分からない
  • ・攻めるべき部署、会うべき人に関する一元的な管理ができていない
  • ・検討から契約までの期間が長くなってしまう
  • ・再購入や再契約、解約阻止などのための関係性のマネージメントが必要

といった課題に、データ分析やAIを駆使して取り組んでいます。本稿では、ビジネスにおける人と人との繋がりを研究する、Sansan データサイエンティスト 真鍋友則(まなべ とものり)氏に話を聞きました。

「出会い」のデータには無限の可能性がある

── 名刺を研究しようと思ったきっかけを教えてください。

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── 真鍋
「もともとデータ分析に興味があり、大学時代もそれに近い研究をしていました。名刺を研究しようと思ったのは、名刺データの可能性に惹かれたからです。

人のつながりを分析することで新たな価値をみい出せるのではないか? ビジネスに活用できるのではないか? と思いました」

── 名刺データの可能性とは、具体的にどういった点でしょうか?

── 真鍋
「名刺は人のつながり、すなわち人間関係の多様性や深さを表しています。人のつながりを分析することで、人間関係が基盤となっているビジネスそのものを解き明かすことができるのではないか、と思っています。

名刺は、ソーシャルキャピタルを表すデータだと捉えられます。ソーシャルキャピタル(社会関係資本)は、人間関係を財産、資産、チャンスとみなし、お金などの資本と同様、資本の一形態とみなす、社会科学の伝統的な考え方です」

名刺から人脈をマッピングし、組織図を可視化する

── 名刺を分析することで、具体的にどんなことがわかるのでしょうか?

── 真鍋
「たとえば、法人向けクラウド名刺管理サービスSansanのβ版サービスのひとつ『ABMダッシュボード』では、企業同士の関係性がわかります。

ABMダッシュボードを使うと、人脈をマッピングできます。自社と他社の2社間における人脈をわかりやすく可視化することで、相手企業のどの部署・どの役職とのコネクションが社内にあるか、瞬時に把握できます。

この機能は組織図が複雑な大企業へ営業を行う際に、とくに有効だと思います」

── 名刺をどのように活用しているのでしょうか?

── 真鍋
「もらった名刺をスキャンしてSansanに取り込むと、部門名と役職名で自動的にマトリクスが作成され、該当のマスに人脈をマッピングします。会った人のいるマスは色が塗られる仕組みなので、部長クラスや役員クラスと会えているのか、何人の管理職と会えているのかなどが一目でわかります。

名刺から手動で組織図を作成する場合、抜け漏れが発生します。一方、ABMダッシュボードは、自動で部門名と役職名をマッピングするので、網羅的な組織図を作成できます。データ分析の成果を応用して、企業によって名称にばらつきがある部門名、役職名を一定の精度で分類することを可能にしています」

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── ABMダッシュボードの具体的な活用方法を教えてください。

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── 真鍋
「主に営業戦略に使われています。この企業のこの部署には営業をかけている、あの部署にはまだかけていない、という状況が一目でわかります。

契約が取れなかった際や解約が発生した際などに、次にあたるべき部署、役職の仮説を立てることができます」

名刺で営業の謎を解き明かす

── 名刺×AIは、いままでの“営業”をどう変えていくんでしょうか?

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── 真鍋
「営業は一般に、勘と経験の世界です。そして、優秀な営業とそうでない営業の間で成果が分かれやすい、属人性が高い世界です。

しかし、名刺データから人脈を可視化することで、営業は『個人 対 個人』という関係性から『個人の背景にあるネットワーク 対 個人の背景にあるネットワーク』という関係に変化します。

たとえば、ある営業は取引先の企業に所属する、人脈のハブとなるキーマンとたまたま知り合いで、そのコネクションを使えるから成果をあげているのかもしれません。個人の背景にあるネットワークを可視化することで、“優秀な営業”を定量化できます。

今後は、営業をより科学的に分析することで、属人的なものから離れていくと考えています」

── 個人の背景にあるネットワークから具体的にどんなことがわかりますか?

── 真鍋
「ネットワークから個人の状態を予測できることが知られています。ネットワークの多様性や、仲介的ポジション、ページランクなどの指標から、その人の経済状態や企業内の位置など、さまざまなことが推定できるのではないかと考えています。

そのうえで、『今その人に欠けているネットワークは何か』『どんな人と知り合うとこの人はよりリッチな社会的経験を得るか』などがわかると、面白いと思います」

ユーザーとともに創る名刺を活用した未来

── 今後、さらにサービスを拡大するにあたり、意識していることはありますか?

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── 真鍋
「顧客企業のビジネスを一歩先へ進めることができる機能を作るためには、生煮えの状態でもまず公開し、ユーザーの反応やフィードバックを取り入れながら改善することを意識しています。ABMダッシュボードは『企業の組織構造をきちんと把握したい』『本当の意思決定者はどの部署にいるのか知りたい』というニーズに基づいて開発されました。

ユーザーにサービスを使ってもらいながら、ユーザー自身にも新しい使い方を発見してもらえればと思っています。

また、ビジネスシーンにおける顕在化していない新しい課題を定義し、解決方法を提示することで、ユーザーに新しい価値を提供することも意識しています。現在、そのための試験的な分析として、人脈のマッピングと、自社の営業実績データや時系列データなど、複数のデータを組み合わせた研究を行なっています。

これにより、従来感覚頼みになっていた状況把握や受注確度を、定量的に示すことも可能になるのではと考えています」

最近は、企業に所属しないフリーランスも増えていますが、フリーランスの人脈においても名刺は有効活用できるとのこと。

ビジネス上のつながりから”優秀な営業”の秘訣やインフルエンサーの秘密が解き明かされる日は近いのかもしれません。

Ledge.ai(制作:Ledge.ai 執筆:安藤 なつ)
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