テクノロジーの最新トレンドと日本HPのデバイスを中心に紹介しています。

2019.05.31

テクノロジーがクリエイティブの可能性を切り開いていく
― インタラクションデザイナー・VJ 中田拓馬

音楽の世界ではシンセサイザー、写真や動画の世界ではデジタルカメラ、といったように、クリエイティブの世界においてデジタルデバイスの重要性は日増しに大きくなってきました。

民生用のPCでは1枚のCGをレンダリングするのに1時間以上かかっていた80年代とは異なり、4K 60fpsの映像をリアルタイムに扱えるPCも登場している現在。従来ならば考えついても諦めざるをえなかった表現手法であっても、最新かつ最良のデバイスならばその想いを具現化するためのアシストをしてくれます。

そんなパフォーマンスの高いデジタルデバイスを誰でも手に入れられる現代。テクノロジーは私たちが考えるクリエイティビティをどのように刺激するのでしょうか。最新テクノロジーを駆使して映像表現の世界をリアルタイムに拡張してきた、インタラクションデザイナー・VJの中田拓馬さんに、テクノロジーとクリエイティブの密接な関係性を尋ねてみました。

中田さんの過去作品「OMRON LIGHT TABLE UI」

日本科学未来館で行われたSingularityU JAPAN SUMMITで展示された作品。温度、気圧、UVなど計7つの情報が取得できる環境センサーを用いて、館内に散りばめた50個のセンサーの情報をリアルタイムで取得し、タッチパネルでインタラクティブに表示するインスタレーション。

ビジュアルプログラミング言語との出会い

1989年に静岡県で生まれ、1993年から父親の転勤とともにブラジル、フランス、セネガル、インドネシアと世界各国を回ってきた中田さん。現在は周囲の音の波形や、読み込んだ映像の動きをキーとしたインタラクティブな映像プログラミングを得意としていますが、当初は日本のネットカルチャーから映像表現に興味をもったそうです。

中田:中学生のころ、ちょうどインターネットが流行りだしたんですね。当時、自分はインドネシアに住んでたんですけど、日本のカルチャーをどうにかして見てみようと思ってインターネットを検索しまくったところ、MAD動画って言われているものを見て映像やモーショングラフィックスに憧れました。

マッシュアップによる自由な映像作品が、アンダーグラウンドな日本のネットカルチャーのいち側面でもあった2000年前後。中田さんは若くして映像編集の道を歩み始めます。

中田:その頃はMAD動画とかって、具体的になんのツールを使って作っていたのか知らなかったんですよ。でも中学3年のときにPremiereをはじめて触って、動画編集みたいなことはしていました。当時は誰かが撮影した、実写の記録映像を使って編集し、完成したものを誰かに見せて楽しんでもらうということをやっていました。そして本格的に映像を学ぼうと思って、日本の美術大学に入りました。

しかし求めていた授業内容ではなかったとのことです。

中田:誰かに見てもらって喜んでもらうといったものを望んでいたんですけど、実際は教室の中で完結しちゃっている授業ばかりだったので、なんかちょっと違うのかなって思っていて。そんなときに、真鍋大度さん(ライゾマティクス)がニュージーランドでやってたプロジェクトをYouTubeで見て、プロジェクションマッピングやインタラクティブアートを知りました。これだったら自分が望んでいた、映像とフィードバックみたいのが作れるかもしれないと思ったんです。

そして大学3年のとき、中田さんはオランダのユトレヒト芸術大学へ留学します。その地で出会ったのが、リアルタイムな映像生成に特化したビジュアルプログラミング言語「vvvv」です。

中田:真鍋さんに興味を持った時、プログラミングを勉強しなきゃいけないんだと感じました。でも大学の授業やワークショップを受けたんですけど全然駄目だったんですよ。openFrameworks無理、 C#もC+もjavaScriptもWeb系もまったくわからない。しかしオランダでvvvvを教えてくれる師匠みたいな人に知り合って、使い方を見せてもらったんです。vvvvなら直感的に作れることがわかって、これだったらプログラミングのバックグラウンドがない自分でもできるかもしれない、と思ってやったらハマりましたね。

テキストベースのプログラミングが一切できないという中田さんでしたが、vvvvを駆使することで、VJの世界大会で2位となるほどの実力を身につけました。そして様々なアーティスト活動を続け現在に至ります。

インタラクションデザイナーとして理想的なハードウェア

2016年よりテクニカルディレクターとしてCEKAIに所属。多くのクライアントの映像演出・インタラクションデザインに取り組んできた中田さん。京都府南丹市の「KYOTO ILLUMINATION SYNESTHESIA HILLS (京都イルミネーション シナスタジアヒルズ) 」をはじめ、施設内・エリア内でのインタラクティブアートも手がけています。その立場から求めているハードウェア像を聞いてみました。

中田:常設で、営業時間内は常時可動しているような環境を想定すると、展示中にハングアップするのがいちばんまずい。だからエアフローの設計がきちんとなされているマシンが理想的です。そしてCPU・GPUのパワーも必要です。カスタマイズしやすいのもポイントですね。

そこで注目したのが、安心して信頼して使えるマシンであるワークステーションです。現在は8K解像度のインタラクションムービー制作のために「Z8 G4 Workstation」を使っているそうです。

中田:ノートパソコンだとパワー不足、自作デスクトップマシンだとよくわからないトラブルが発生することがありました。でも以前使っていた「Z230 Workstation」は、展示において一度もハングアップしたことがなかったんです。意外とそういうマシンってないんですよね。ハイパワーなマシンとしてゲーミングPCはたくさんありますが、数十時間も連続して動かすことになる業務用で使用するには、安定稼働するものが少ない気がしています。

ただし、サイズが大きいというネックを感じてもいます。

中田:展示場所に、毎回タワー型のヘビー級マシンを持って行くのは辛いところがあります。ですからハイエンドなスペックを満たしつつ、「Z2 Mini G4」ぐらいのサイズのマシンがあったらいいですね。

例えばノートマシンのグラフィクス性能を高めるeGPU(外付けビデオアクセラレーター)はありますが、これも安定性において信頼しにくい。しかしHPのワークステーションには、NASAの火星探査時にも使われたHP3テクノロジソリューションが採用されており、オフィスに設置したワークステーションの演算能力をリモート端末であるモバイルマシンで活用することも可能です。いわば、クラウドGPUの環境をオフィス単位で構築できるシステムとなります。

中田:将来的にはモジュール式で、必要なCPU&GPUを選んで組み合わせられるマシンが出てきてくれたらいいですね。いままで展示用のマシンはカスタムで作ってきたので、それがデスクトップという形ではなく、もうちょっと持ち運びしやすいような形だったらいいなという願いはあります。

時代をリードする表現者を支えるワークステーション

リアルタイムレンダリングという表現手法において、4Kが普及し始めてきた現在、その先にある8Kクオリティにチャレンジしている中田さん。その表現力を支えているのがワークステーションでした。

最先端のデジタル・メディアアートにチャレンジし続ける表現者だからこそ、最高峰のスペックから手頃な扱いやすさまで、多様なニーズに応え、様々なシーンに適応するワークステーションラインナップの存在が欠かせないといえるでしょう